コロナ無料検査の補助金、都内の診療所院長が10億円申告漏れ…委託費として計上も別用途に

都道府県が実施した新型コロナウイルスの無料検査事業を巡り、美容医療診療所「スキンシアクリニック」(東京都荒川区)の石山実穂院長が東京国税局から約10億円の申告漏れを指摘されたことが関係者の話でわかった。都に報告した検査実績に基づいて補助金約28億円を受け取っていたが、うち約10億円は検査を行ったとされる外部委託先に支払われておらず、石山院長の所得に当たると認定されたという。
約10億円もの補助金が受給者個人の所得に当たると国税当局から認定されるのは極めて異例。補助金を目的外に使用された形となる都は取材に「不適切に受給したという情報があれば調査する」としている。
関係者によると、石山院長は同クリニックを個人で運営していた2021年12月、新型コロナの無料検査所を開設するとして都に事業者登録を申請。22年3月以降、同クリニックと港区赤坂、板橋区成増の計3か所に検査所を設け、無料でPCR検査を行ったなどとして、都から約28億円の補助金を受給した。
同クリニックは実際の検査業務を外部の数社に委託しており、委託費として計約28億円を計上していた。しかし東京国税局が23年に調査したところ、うち約10億円は実際には委託先に支払われておらず、大部分は石山院長の夫である男性医師が検査事業とは無関係の用途に充てていたことが判明したという。
委託先の代表者らは所在不明とみられ、委託費が支払われなかった詳しい経緯や、報告された実績通りに検査が行われていたかどうかはわかっていない。
同国税局はこれらを踏まえ、委託先に支払われていなかった補助金約10億円は石山院長の22年の所得に該当し、夫が使った分は夫への貸付金に当たると認定。税務申告が必要だったと指摘したという。過少申告加算税を含む所得税などの追徴税額は約6億円で、石山院長は既に修正申告したとみられる。
厚生労働省などによると、石山院長は14年に医師免許を取得。同クリニックは20年の開設で、23年1月から石山院長が代表理事を務める一般社団法人が新たに開設者となり、同じクリニック名で運営されている。
読売新聞は石山院長や夫に文書などで複数回取材を申し込んだが、回答はなかった。無料検査所3か所のうち2か所は、夫の親族が営む医療法人社団の名前で運営されており、親族は取材に「名義を貸しただけで検査には関与しておらず、委託費も一切受け取っていない」と話した。
◆新型コロナウイルスの無料検査事業=2021年12月~23年5月に全国約1万3000か所に検査所が設けられた。実施主体は都道府県。国の臨時交付金約6200億円を財源に、検査所開設費(最大約130万円)やPCR検査費(1件4100~1万1500円)などを補助した。

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