水俣病訴訟で賠償棄却、熊本地裁にバス5台で集った原告側は大阪との落差に怒り…「受け入れられない」

水俣病被害者救済法に基づく救済対象から外れた熊本県や鹿児島県の住民らが国と熊本県、原因企業のチッソに賠償を求めた訴訟で、144人の原告全員の請求を棄却した22日の熊本地裁判決。昨年9月の大阪地裁判決に続く勝訴を待ちわびた原告側は沈痛な空気に包まれ、「すべての被害者救済まで闘う」と控訴する意向をにじませた。
午前11時過ぎ、熊本地裁の101号法廷。品川英基裁判長が原告全員について請求棄却を告げると、法廷は一瞬、静まり返った。原告らは沈黙し、重苦しい雰囲気に包まれた。
「不当判決」――。地裁前に出てきた4人が苦渋の表情で垂れ幕を掲げると、吉報を信じた約300人の原告や支援者からは「思ってもいなかった」「こんな判決が出るとは」と怒りの声が相次いだ。
原告は未認定患者団体「水俣病不知火患者会」の会員らで、歴史的瞬間に立ち会おうと、支援者らとバス5台に乗り込んで熊本地裁に到着。門前集会に臨んだ後、「ノーモア・ミナマタ」ののぼりを掲げ、地裁へ入っていった。
判決後、園田昭人弁護団長(69)は「非常に残念な、解決に結びつかない判決。被害の実態を直視すれば、このような判決になるはずがない」とマイクを持つ手に怒りを込めた。
大阪地裁は昨年9月、128人の原告全員を「水俣病」と認め、国と県、チッソに1人あたり275万円、総額3億5200万円の賠償を命じる判決(控訴中)を出しており、園田弁護団長は「苦難は続くが、引き続き力を合わせて闘っていきたい」と述べた。
原告団長の森正直さん(73)は「私たちの言い分を全く聞いていない不当な判決で、受け入れることはできない」と憤った。
原告の一人で、熊本地裁前で判決を待った鹿児島県長島町の岩崎明さん(72)は、「当然勝訴だと思っていたので、敗訴になる理由がわからない。まさかの一言だ」と戸惑っている様子だった。

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