能登地震ボランティア、志願3万3千人も活動中は1% 「静かすぎる被災地」復興にも影響

能登半島地震で石川県に登録している公的な災害ボランティアが約3万3千人に上るのに対し、実際に活動中なのは約370人と登録者の約1%にとどまることが、県のまとめで分かった。これまでの累計活動数も延べ約1万人と全体の3割程度。一方で民間のボランティア団体は元日の発災直後から数多く活動しているものの、マンパワー不足に悩んでおり、両者をどうつなげていくかが「ボトルネック」解消の鍵を握っている。
支援に「半島性」の壁
「被災地としては静かすぎる」
3月7日、県庁で開かれた有識者らによる復興に向けた「アドバイザリーボード会議」の初会合で、委員の一人からこんな声が上がった。平成23年に起きた東日本大震災や28年の熊本地震など過去の災害と比べて、ボランティアら外部からの支援活動が活発ではないとの指摘だった。
県によると、災害ボランティアは3月19日時点で約3万3千人が登録。一方で、同18日時点で実際に活動しているのは輪島市など被災6市町で計370人程度と、登録者の1・1%にとどまる。1月27日からの活動人数の延べ1万720人でみても3割程度だ。
その理由として、今回の被災地特有の「半島性」が挙げられる。金沢市と奥能登地域を結ぶ数少ない幹線道路である高速道路「のと里山海道」と能越自動車道は3月15日、応急復旧を終えて全区間が通行可能となったものの、途中区間からは輪島方面への一方通行のみ。断水が続く地域も多く、宿泊施設の再開もままならない。
こうした道路や宿泊事情から県や国は当初、ボランティアの往来を控えるよう呼びかけたが、それがいまだに尾を引いている面もあるという。
県は2月26日、奥能登地域の入り口にあたる穴水町にボランティア用の宿泊拠点「奥能登ベースキャンプ」を開設。旧中学校舎に定員1~2人のテント95張りを用意し、参加者は寝袋を持参して2食分の食事代1千円を負担する。1泊2日の活動用で、風呂はなくタオルで体をふいてもらっている。
県によると、同拠点の利用率は8~9割。こうした宿泊拠点の増設について、県は「課題ではあるが、具体的なものはない」(県民文化スポーツ部)としている。
災害ごみ片づけ程度
ボランティアニーズの把握や作業内容にも課題が指摘されている。
県は今回、ボランティアへの応募殺到を防ぐためとして、当初から各市町のボランティアの受け付けを一括管理している。派遣規模や作業内容は各市町の要請に基づく仕組みだが、その結果、作業内容は現在、災害ごみの片づけや仮置き場への運搬、物資の仕分けにとどまっている。
県は「あくまで市町からのニーズとして来ているものを紹介している。そもそも一般のボランティアは重機を扱うなど危険な作業は難しい面もある」と説明する。
こうした公的ボランティアの一方で、民間の専門的なボランティア団体の活動は発災直後から広がっている。NPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」(東京)の3月13日時点のまとめによると、同法人が把握しているだけで延べ159団体が被災地で活動。彼らは食料や宿泊場所を自ら確保し、物資の提供や炊き出し、避難所の運営支援、重機を使った作業など、それぞれの得意分野で活動しているという。
民間へ人材誘導を
ただ、民間だけでは絶対数が足りず、県に登録している約3万3千人もの志願者をどう実際の活動につなげるかが課題だ。
奥能登4市町の人口は約5万5千人で、今回の地震で過疎化がさらに進むと懸念されている。一方で、ボランティア登録者の8割に当たる約2万6600人は県外の志願者だ。こうした都市住民がボランティア活動を通じて奥能登の人々と関わるきっかけを持ち、その後も継続的に関わる「関係人口」になることは、復興にとって重要な鍵ともなってくる。
民間ボランティアからは「今後は仮設住宅への引っ越し需要などニーズも変化していく。県の登録者に民間団体の情報をメールや掲示板などで共有し、希望すれば民間の活動にも参加してもらう仕組みづくりがあってもよいのではないか」との提案も出ている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする