「安倍政権の外相は安倍氏」だった…訪米・訪朝〝岸田外交〟に期待と不安 成果焦れば国益損なう事態、問われる戦略と理念

岸田文雄首相の「外交力」に注目が集まっている。来月、国賓待遇で米国を訪問し、ジョー・バイデン大統領と首脳会談を行い、上下両院合同会議で演説する。日本人拉致問題や核・ミサイル問題の全面解決のため、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との首脳会談も期待されている。ただ、拙速なLGBT法の法制化や、政権の増税・負担増路線、自民党の「政治とカネ」の問題などで、内閣支持率は「危険水域」に沈み込んだままだ。逆風の中で外交成果を焦れば、国益を損なう事態も予想される。

「日朝関係、拉致問題などの諸課題解決にはトップ会談が重要だ」「私直轄のレベルでの北朝鮮に対する、さまざまな働きかけを行っている」
岸田首相は25日の参院予算委員会で、日朝交渉の展望をこう説明した。ここに来て、北朝鮮側は首脳会談をチラつかせ、揺さぶりを強めている。
正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は同日、朝鮮中央通信で、「岸田首相が『可能な限り早い時期に金正恩総書記と直接、会談したい』との意向を伝えてきた」と〝暴露〟し、首脳会談に前向きともとれる談話を発表した。
拉致被害者や、その家族が高齢化し、再会のタイムリミットが迫るなか、北朝鮮の最高指導者周辺が、日本の首相を名指しして公式な発信を行うのは極めて異例だ。
今年に入って、正恩氏は能登半島地震を見舞う岸田首相宛の電報を送るなど、秋波を送ってきていた。ところが、与正氏は翌26日、朝鮮中央通信で、まったく違った〝爆弾発言〟を投げかけてきた。
「史上最低水準の支持率を意識する岸田首相の政略的打算に日朝関係が利用されてはならない」「首脳会談は関心事ではない。いかなる接触も交渉も断固拒否する」
与正氏は、拉致問題と核・ミサイル問題の全面解決を重ねて求めるわが国の姿勢に強烈な反発を示し、一転して交渉を「拒否」してみせたのだ。
岸田首相は昨年10月の所信表明演説で、「拉致問題は、ひとときも揺るがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題です。すべての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現し、日朝関係を新たなステージに引き上げる」と国民に約束している。26日、記者団に「コメント一つ一つに何か申し上げることは控える」「北朝鮮との諸懸案解決のため、従来の方針のもと、引き続き努力を続けたい」と語った。
政府関係者は「水面下の接触を含め、外交交渉を同意もなく表沙汰にするのは〝禁じ手〟だ。北朝鮮は常識がまったく通用しない」と述べた。

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