〈原宿・偽ブランド品販売〉逮捕報道翌日に「ブラザー!服、帽子いっぱい、安いよ」懲りない竹下通り・外国人の“悪質売りつけ”…上京ホヤホヤの大学生は「店を出ようとしても出口を塞がれた」

東京・原宿の竹下通りのアパレル店で、若者に人気のブランド「ステューシー」の偽物を販売目的で所持していたとして警視庁生活経済課は3月27日、ギニア国籍のディアロ・アブドラハマン容疑者(52)を商法法違反(販売譲渡目的所持)容疑で逮捕。ステューシーに加え「フォーティーセブン」や「クロムハーツ」といった人気ブランドのパーカーやTシャツ、帽子など約230点の「偽物」を押収した。
「コピー品を売り始めたのは90年代後半くらいから」
ディアロ容疑者は自身が店長を務める「WEST BOY71」で、販売目的でステューシーの偽物のパーカー3点を所持していた疑い。付近では昨年秋から今年にかけて、修学旅行などで訪れた中高生が、強引な手法で店内に誘い込まれ、偽ブランド品を売りつけられたという被害が頻出。相談を受けた警視庁が内偵捜査を続けていた。

そこで取材班は悪質偽ブランド業者摘発を受け、竹下通りを歩いてみた。どうやらこの手の話は恒例行事のようで、近くのブランドショップの女性従業員はこう肩をすくめた。
「27日の14時半ごろに警察官が10人くらいで来て、店長らしき人が手錠をかけられて連れていかれました。その後、2トンくらいのトラックが来て、大量のダンボール箱を持ち込んで組み立てて、お店の服を詰めてトラックで運び出していましたよ。かなりの量を運んでいたみたいで、作業は2時間弱もかかってましたね。逮捕された人は別の人でしたけど、一昨年の2月頃にも同じようなことで摘発があったんですよ。その時に摘発にあったお店は数ヶ月間閉めてて、隣りの同じようなお店も警戒したのか閉めてました。店名まで変えてるかはわからないですけど、数ヶ月後には普通に営業してたんで、今回も変わらないんじゃないですかね。実際、竹下通りの周りには同じようなお店がたくさんありますし、他店が摘発されたところで、何食わぬ顔で営業してますからね」この女性従業員の記憶は正確だった。2022年2月24日、警視庁生活経済課は偽ブランド品を陳列していたとして商法法違反容疑(販売目的所持)で摘発、経営者を逮捕したと発表している。このときの店名は「Good Luck HIP HOP」で、逮捕されたのはナイジェリア国籍の40代の男で、「グッチ」「バレンシアガ」「バーバリー」「ルイ・ヴィトン」などの偽ブランド品約400点を押収していた。
「WEST BOY71」の近くのブランドショップで働く男性は、この街における偽ブランド品販売の“歴史”としきたりをサラッと語ってくれた。「うちのお店は30年以上原宿で商売してるんですけど、外国人たちが客引きしてコピー品を売り始めたのは90年代後半くらいからですね。やりくちはずっと変わらないですよ。観光客や学生に声かけてお店に連れてって圧かけて買わせるっていう、押し売りみたいなもんです。営業時間は細かく決まってなさそうですけど、10時過ぎから19時前くらいまで客引きしてますね。あいつらはフレンドリーにニコニコしながら接してきて、お金の両替を頼んできたり、クレジットカードの機械の使い方を聞いてきたりするんですけど、変な揉め事もしたくないんで応じたことはあります。ただ、観光客にお金をだいぶ使わせるから、うちの店に寄る頃には手持ちがほとんどない、なんてこともよくあるので迷惑で仕方ない」
ガタイのいい黒人男性に「ヘイ!ブラザー!」と呼び止められ…
「アイツらは、地方から来た人や若年層をターゲットにしていますね。『チラシだけもらいに来て』みたいに言って店舗に連れ込んでいますね。今まで3~4回ほど、高校生くらいの子が、『上の店で帽子とかカバン買わされたんですけど、どうすれば返品できますか?』ってこの店に駆け込んで来たことがありますよ。上の店舗の家賃は少なくとも50万円以上すると思うから、それで成り立つってことは、原価率をかなり抑えて商売していると思いますよ」今回摘発された「WEST BOY71」が入居するテナントビル付近でも、入り口に偽ブランド品の写真を掲示し、外国人店員らが性懲りもなく客引きを続けていた。観光客や大学生くらいの年齢層にターゲットを絞っており、外国人観光客には英語で、日本人相手にはカタコトの日本語で「服、帽子、いっぱいある。安いよ。30パーオフ。見るだけ。場所教える」と営業トーク。この店から出てきた30代の中国人男性の観光客に声をかけてみた。
「私たちの国でもとてもよく似たものが作られています。だから商品は何も買わずに出てきました。偽物を本物と偽って販売するのはよくないと思う」賢明な判断だ。近くを歩いていた大阪出身という若い男性が、自身の“黒歴史”を打ち明けてくれた。「5年くらい前ですかね、上京したてのころに友達と竹下通りを歩いてたんですよ。そしたらガタイのいい黒人の男に『ヘイ!ブラザー!』と呼び止められて、いきなりグータッチを求められたんです。自分も関西人なんで無視できなくて、グータッチしたら『イケメン!』っておだてられて、肩組みまでされたんです。友人ももう1人の黒人に同じことされてましたね。原宿は外国人までノリええんか、さすがやなって気持ちでした。それで『服見てってよ』って言うし肩も組んでるからそのまま店まで案内されました」
外にはまた外国人が5人くらい待機していた
そこにはヴィトンやグッチ、シャネルなどのハイブランドから、X-LARGEやTHRASHERといったストリートブランドなど、さまざまなブランドのTシャツ、パーカー、キャップが並んでいた。もちろん偽物だ。「Tシャツは1枚8千円くらいでパーカーは1万円くらいでした。正直、何も買う気はなかったんで、お店を出ようとしたら、1人が出口に立ち塞がって『入ったなら何か買わなきゃ』と言って退かないんですよ。それで渋ってたら『2枚で1万5千円にするよ』と値段の交渉をしてきました。でも1万円しか持ってなかったんで、『そんなに金持ってないよ』と財布を見せたら『2枚で8千円でいいよ』とさらに値引きをしてきたんです。もう買わなきゃ出られないし、2枚ならいいかと思って白地に青でロゴが入ったドルガバのTシャツと、黒地に緑でドルガバとモンスターエナジーのロゴが入ったTシャツを買いました。友人はX-LARGEのTシャツを買ってました」
高い授業料と引き換えに、ほうほうの体で逃げ出した2人の若者は、今度は違う「ブラザー」に捕まった。「やっと出られたと思ったら、『ブラザー!こっちも見てってよ!』と、また違うやつに肩組まれて、同じ建物内の隣りの店舗に連れていかれたんです。そっちはスニーカーとキャップを置いてる店でした。ナイキがブルズやレイカーズといったNBAチームとコラボしてるというよくわからないスニーカーが1万数千円で売られてました。でも前の店でお金使ってもう2千円しか持ってなかったから、『ブラザー、わしほんまにもう金ないねん』と財布見せたら帰らせてくれました。外にはまた外国人が5人くらい待機してたんで、持ち合わせがあったら、また連れていかれてたかもしれないですね。後日、このことを東京の友人に話したら『あんなんに引っかかるやつおらんで、パチモンつかまされてるやん』と馬鹿にされました」見たこともない「ブラザー」の恐喝まがいの押し売りを許してはいけない。せっかくの修学旅行が黒歴史にならないよう、警視庁のお巡りさん、警戒よろしくお願いします。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする