空から大盛り牛丼舞い降りる「温かいご飯うれしい」…すき家などと共同でドローン配送実証実験

福島県は今年度から、県内で製造・開発されたドローンを含むロボットの新たな活用法を探る実証事業を公募する。福島第一原発の事故後、県はロボット産業の振興に力を入れており、ロボットを社会の中で広く役立てる方法を探る。その先駆けとして、南相馬市では、ドローンで牛丼を配送する実証実験が行われた。(山口優夢)
先月28日、同市の福島ロボットテストフィールド(ロボテス)にゆっくりとドローンが舞い降りると、見守っていた職員から拍手が上がった。ドローンに取り付けられた段ボール箱には3人分の牛丼が入っており、ロボテスの女性職員(33)は「近くに飲食店がないので、昼食を食べに外に出るのが難しい。温かいご飯を届けてくれたらうれしい」と注文した大盛りの牛丼をほおばっていた。
この実証実験は、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングス(東京)と、産業用ドローン製造販売「イームズロボティクス」(南相馬市)、県が共同で実施した。ドローンは2・5キロの距離を15分ほどで飛行し、県の担当者は「まずは無事届けられて安心した」と胸をなで下ろしていた。
原発事故で産業に打撃を受けた浜通りで、廃炉作業に必要なロボット技術を集積して新たな産業の柱にしようと、県は2015年度から、ロボットなどの開発支援に予算をつけてきた。現在、県内ではドローンのほか、人体に装着する作業支援ロボットや運搬用ロボットなど様々なものが製造・開発されている。
県はこのほか、事業者を対象として県内で製造・開発されたロボットの購入費用の半額を補助し、販路開拓の支援を行っている。リビングロボット(伊達市)が開発した教育用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」もその一つだ。小中学校の授業で使われるプログラミングソフト「スクラッチ」で動作を命令すると、ロボットを動かすことができる。
同社によると、県内外の50以上の学校や教育機関で利用されており、国見町でも昨年度、県の補助を活用して町内の小中学校に38台を導入。町の担当者は「自分の作ったプログラムでロボットが動くと、子供たちの反応がとても良い。県の補助金を活用できる点は大きなメリットになる」と話す。
ロボットの新たな活用法を探る実証事業は、ロボット産業のさらなる活性化を図るための取り組みで、夏頃をめどに一般から募り、3件程度を採択。新年度予算には約2000万円を計上している。県の担当者は「ロボットで生活が変わったと実感できるような取り組みをしたい。幅広いアイデアを寄せてもらいたい」と話している。

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