《自民全敗》《裏金全滅》……。SNS上では歓喜と興奮の声で溢れているよう。28日に投開票された衆院の東京15区、島根1区、長崎3区の3補欠選挙で、いずれも自民が敗北(東京、長崎は不戦敗)を喫したことだ。
自民党派閥の政治資金パーティーの裏金事件発覚以降、初めての国政選挙。
東京15区は江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途氏(自民離党)の辞職に伴うもので、立憲民主党の新人で、元江東区議の酒井菜摘氏(37)が初当選。島根1区は自民の細田博之前衆院議長が死去したためで、立憲の元職で党県連代表の亀井亜紀子氏(58)が自民新人で元中国財務局長の錦織功政氏(55)=公明党推薦=に勝利した。
長崎3区は裏金事件で立件された谷川弥一氏(自民を離党)の辞職に伴うもので、立憲の元職で党県連副代表の山田勝彦氏(44)=社民党推薦=が当選を決めた。
「自民に対して大きな厳しい目が向けられている」
3補選全敗を受け、28日夜、党本部でこう語った自民党の茂木敏充幹事長(68)。与野党一騎打ちとなった「保守王国」の島根で自民が衆院小選挙区の議席を落とすのは1996年の小選挙区制導入以降で初めて。岸田文雄首相(66)や小渕優子選対委員長(50)など幹部が現地入りし、総力戦を展開したにも関わらず「惨敗」したのは大きいだろう。
■森元首相は「(選挙に関心のない有権者は)寝てしまってくれればいい」
一方で、気になるのが投票率の低さだ。
投票率は東京15区が40.70%、長崎3区が35.45%、島根1区は54.62%で、いずれも過去最低を更新。ゴールデンウイーク前半の連休中とはいえ、裏金事件で注目を集めた国政選挙の投票率としては低すぎるのではないか。
これでは“本番”の総選挙でどうなるか分からない。「派閥パーティーのキックバックを始めた人物」との声が出ていた森喜朗元首相(86)は2000年6月の総選挙の遊説中、会見で「(選挙に関心のない有権者は)寝てしまってくれればいい」と発言。低投票率が組織票を持つ自民に有利に働くーーとの見方を示していた通り、今回は自民全敗だったものの、それでも組織票を持つ自民はしぶといのだ。
「保守大国という意味では大打撃だが、本部の受け止めは中打撃。ある意味折り込み済みだった」
28日のフジテレビ系「Mr.サンデー」で、同局政治部デスクはこう解説。これが事実であれば、今の自民は“お家芸”の「死んだふり」をしているだけ。「裏金事件でもこの低投票率なら、のど元過ぎればシメシメ……」などと考えているかもしれない。とにかく自民は狡猾なのだ。
《だれに投票しても同じ》《政治は変わらない》《自民は嫌いだが野党もだらしない》
SNS上では、こんなステレオタイプの冷めた意見も見られるが、その結果が裏金事件を生み、大増税を招いたことを忘れてはならないだろう。裏金議員らを本当の意味で“罰する”ことができるのは有権者なのだ。