能登半島地震で、石川県内では最大11万戸が断水した。自治体が水道管を補修して9割以上で解消したとされるが、住民が復旧させる住宅敷地内の給水管が損傷しているため、4か月がたつ今も水を使えない家庭は少なくない。被害の大きい輪島市、 珠洲 市など能登地域では修理業者の被災もあって半数近くが「対応困難」としており、県は地域外からも業者の確保を急ぐ。(金沢支局 古渡彩乃、珠洲通信部 成島翼)
「毎回20リットルの水を運ぶのは大変だった。一歩前進」
珠洲市三崎町 雲津 の住宅で4月25日、給水管の修理が終わって台所の蛇口から水が勢いよく流れ出すと、住人の女性(71)は安心した表情を見せた。
周辺は4月上旬に断水が解消したが、女性宅では庭の地中にある給水管の修理ができなかったため、3日に1度、車で15分の給水所に通っていた。修理を担当した市内の水道工事会社の男性(36)は「お待たせした。修理の予約が山のようにある」と足早に次の家へ向かった。
県によると、県内の断水は4月30日現在で輪島、珠洲、能登の3市町の計約3780戸。立ち入り困難な地域を除き、5月下旬までに順次解消する見通しだ。
ただ、自治体が水道管を復旧させても、住宅敷地内の給水管が破損し、水が出ないケースも目立つ。輪島上水道給水組合(輪島市)が加盟7社に聞き取り調査したところ、4月上旬時点で個人宅の修理依頼は計約1160件に上ったが、このうち600件近くで対応ができていなかった。同組合は「修理依頼が次々と来ている。一つの家であちこち壊れ、その箇所を探すだけでも時間がかかる。地元の業者だけでは回りきれない」とみる。
県と国土交通省のまとめによると、4月30日現在、珠洲、輪島など5市町で工事を手がける延べ497業者のうち、事業所が被災したり受注枠が埋まったりして「対応困難」としたのは計231業者。また、順次対応が可能になると見込むのは計106業者だった。
修理待ちの解消につなげるため、県は「少しでも予約を振り分けたい」と能登地域以外の業者にも協力を求め、住民に業者の情報を発信している。金沢大の宮島昌克名誉教授(上水道防災学)は「自治体が交通費を補助して地域外から業者を呼びやすくするとともに、住宅敷地内に仮設の立水栓を設けるなどの支援も必要だ」と指摘する。