検察はわざとこのタイミングを狙ったのだろうか──。自民党派閥の裏金事件をめぐり、2日に一斉に報じられた萩生田光一前政調会長と世耕弘成前参院幹事長(離党)の不起訴処分のことだ。 萩生田氏は2018年からの5年間で2728万円、世耕氏は同期間に1542万円を安倍派からキックバック(還流)されていたのに政治資金収支報告書に記載しなかったとして、政治資金規正法違反容疑で刑事告発されていた。結局、東京地検特捜部は2日、2人とも「嫌疑不十分」で不起訴としたのだ。
ゴールデンウイーク中で報道機関は取材が手薄。不起訴の事実が短く報じられただけだったが、この処分にネットは大炎上した。2日夜から3日にかけて、「萩生田光一」や「東京地検特捜部」がX(旧ツイッター)のトレンド入り。〈巨悪を見て見ぬふりする東京地検特捜部を誰か取り締まって〉〈与党の脱税は許されるというとんでもない国家〉など検察批判の嵐となった。
■さあ、検察審査会だ
告発した神戸学院大教授の上脇博之氏はこう言う。
「萩生田氏の秘書と世耕氏の政治団体の会計責任者については『起訴猶予』だと報じられています。起訴猶予は有罪にする証拠があるのに、あえてしなかった、ということ。一種の忖度であり、手心を加えているとしか思えません。そして議員本人についても『嫌疑不十分』です。世耕氏は政治倫理審査会で自らを『真っ白』と言っていたが、『嫌疑なし』の白ではなく灰色。2人とも説明責任を果たす必要があるし、弁明次第では、『起訴猶予』の事務所関係者の監督責任を取って辞めなきゃいけない」
既に手元に特捜部の処分通知が届き、上脇氏はすぐさま不起訴理由を開示請求したという。その告知書を確認し、今月中にも検察審査会に審査を申し立てる。
検察審査会が「起訴相当」や「不起訴不当」の議決を出せば、特捜部は再捜査することになる。過去には「起訴相当」を受け、検察が不起訴の判断を一転させたケースもある。再捜査で再び不起訴となっても、検審が2度目の「起訴相当」を出せば強制起訴だ。
■上脇氏「起訴相当議決を出して欲しい」
「不記載額3000万円以下は不起訴」というのが特捜部の基準とされるが、「市民感覚」では納得できないだろう。
「派閥みんなで億単位の裏金をつくっていたことに着目して、検察審査会では起訴相当議決を出して欲しい」(上脇氏)
萩生田氏と世耕氏は首を洗って待っていたほうがいい。