〈〈那須・逮捕された“第6の男”〉センター分けの髪型で普通のサラリーマン風「結婚して子どももいた」「コロナで不動産会社が傾いていた」全身刺青の主犯格との関係は?〉から続く
東京・上野で飲食店を展開する「サンエイ商事」の宝島龍太郎さん(55)と妻の幸子さん(56)の遺体が栃木県那須町で焼かれているのが見つかり、夫妻の長女の内縁の夫、関根誠端容疑者(32)が死体損壊容疑で逮捕された事件で、都内のクラブ店長Y氏が「関根容疑者から夫妻の襲撃計画への加担を打診されたが断った」と集英社オンラインの取材に答えた。Y氏は「僕は何も関係ありません」と強調しつつも、取材で口を滑らせた内容から、関根容疑者が殺害から遺体遺棄まで一切を行う実行犯グループを集めようとし、「指示役」だった福岡県出身の佐々木光容疑者(28)がこれを実行した疑いが出てきた。
〈連続写真〉“夜の正装”黒髪・スーツ姿の佐々木容疑者の正面写真と、サングラスをかけ“ライバル”店“に乗り込む関根容疑者
「(店を)取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」
警視庁と栃木県警の合同捜査本部も関根容疑者がY氏に話を持ちかけたとの情報を把握しており、全容解明のためY氏から事情を聴く方針とみられる。
宝島さんのサンエイ商事は上野で飲食店を20店舗近く集中展開しているが、うち5店舗ほどは関根容疑者が事実上、運営していた。全身に刺青を彫っていた関根容疑者には「商売の才覚があった」と話す関係者もおり、運営する店の売り上げが好調なことを快く思わない宝島さんが「おれの会社だからもっと(売り上げを)よこせ」と主張し、これに反発した関根容疑者が「(店を)取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」と口にするなど、経営の主導権をめぐる内紛が起きていた。警察は関根容疑者は宝島さんから事業を奪う目的で殺害を計画した可能性があるとみている。
事件では夫妻の遺体が見つかった翌日の4月17日に平山綾拳容疑者(25)=埼玉県越谷市=が警察に出頭し「アニキの求めで遺体を処理する実行犯として飲み仲間2人を紹介し、粘着テープなど凶器を購入したうえで車を飲み仲間に渡した」と供述した。この「アニキ」は2月上旬から上野で客引きをしていた佐々木容疑者とわかり、捜査本部は沖縄県で同容疑者を4月28日に逮捕、複数のスマートフォンを押収している。
また、平山容疑者が車を貸し、遺体を那須まで運んだとみられる元俳優の若山耀人容疑者(20)と姜光紀容疑者(20)や、4月15日夜に宝島夫妻を誘い出したとみられる不動産会社代表の前田亮容疑者(36)も逮捕した。指示役の佐々木容疑者は平山容疑者に約1500万円を「報酬」として渡し、平山容疑者は実行役の2人に250万円ずつ配って、残りを自分のものにしていた疑いがある。
捜査本部は、関根容疑者が佐々木容疑者に車や凶器の準備だけでなく、遺体を遺棄するなどの「実行部隊」を用意するよう求め、応じた佐々木容疑者からさらに発注を受けた平山容疑者が若山、姜両容疑者を引き入れたとみている。
Y氏を直撃「関根容疑者から確かに話はされた」
さらに捜査本部が注目するのが、佐々木容疑者がキャッチをしていたバーの関係者で、現在は宝島さんの店が集中する通称「宝島ロード」から離れた場所にクラブを構えるY氏だ。捜査本部は、街頭の防犯カメラに関根、佐々木両容疑者と話し込む姿が映っていたY氏が「自分は佐々木より前に関根から依頼を受けた」と周囲に話しているとの情報を入手。
集英社オンラインも捜査本部がこの情報で関根容疑者の包囲網を狭めたことを察知し、Y氏への接触も試みていた。連休で閉めていた店を再開した5月8日にY氏を直撃すると、「関根容疑者から確かにそういう話はされて」と認めた。
Y氏はまず「結論から言うと僕は何も関係ありません。(関根容疑者とは)僕が前に仕事で出入りしていたバーのすぐそばに(サンエイ系列の)店があったので、自然と会いますよね」と関根容疑者との交流を説明した。
その上で、関根容疑者が今回の事件を計画しているようなことを話していたか、と尋ねると「確かにそういうニュアンスの話はされました。ニュアンスは出ましたよ。だけど俺は関係ないです。ぶっちゃけ言って…あっちが勝手にやったことであって」と自身の関与は強く否定した。
そこで、どのような“ニュアンス”の話があったのか、と問うと、Y氏は依頼の核心を口にした。「とりあえず、『お願いしたいことがある』って。で、内容は『コロし…、消してほしい人がいるんだよね』って…。消してほしいっつうか、話してほしい人がいる、会って…って。で、結果何するんだ、ってことじゃないですか。無理じゃないですか、話聞いても。俺も仕事あるし、とりあえず面倒くさいので『いいです』って断ったんです」(Y氏)
「俺が断ったから佐々木にいったんだと思います」
ところがこの後Y氏は、記者が依頼内容を細かく確認しようとしたところ、我にかえったのか発言を撤回するかのように突然口が重くなった。以下は記者とY氏のやりとりだ。――確認ですが、関根容疑者は「消す」とか「殺す」とか、「消えてもらおう」と(Yさんに)話した?「そういうのはないです」――(宝島夫妻に)店から出て行ってもらうとか、店に関与できないようになってもらう、とか(関根容疑者に)もちかけられた?「それもないすね。俺自身、詳しい話、知らないんですよ」――さきほど、面倒くさいな、やばそうだなと思ったと言われましたが、なぜそう感じました?
「全部ですよ。最初から最後まで」ある捜査関係者は「関根はY氏に、使用者のアシがつかない“飛ばし携帯”と車を手に入れられないかと求めた、との情報があり、このラインで実際に飛ばし携帯が準備された可能性もある」とみている。
この点をぶつけるとY氏は新たな話を口にした。
――佐々木容疑者が捕まったときに押収された携帯は、あなたが調達した飛ばし携帯だったのでは?「あ、違います。佐々木から言われましたもん。『携帯ありませんか?6台ぐらい』と。で、『できないことはないけど、でも何に使うの』って。そんなの、リスクじゃないですか」――関根容疑者から飛ばし携帯の話は出た?
「ないです」――では関根容疑者→佐々木容疑者→Yさんと話が来た?「いや、関根から俺、だと思います。それで俺が断ったから佐々木にいったんだと思います。俺はもう、全部切ってるんで、話。断るでしょ、こんな話、普通。俺だって店やっているんだから」――それ、いつですか?「4月のアタマじゃない(かと思う)」
Y氏の話はわかりにくいが、整理すれば「関根容疑者は俺に協力を断られたため次に佐々木容疑者を引き入れ、その佐々木容疑者も俺に飛ばし携帯の入手ができないかと頼ってきたが、これも断った」という内容だ。Y氏は、関根容疑者から「消してほしい人がいる」と言われたと一度口にした後、同様の表現を口にすることはなかったが、それでも打診内容が、引き受ければ普通の生活を失うことになる、反社会的な内容だったことは隠さなかった。
このことから、関根容疑者は最初から殺害の協力者を求め、指示役の佐々木容疑者にもそう伝えていた疑いがある。佐々木容疑者から指示を受けた平山容疑者は「遺体を処理する実行犯を探せ」と頼まれたと供述しているが、平山容疑者が引き入れた若山と姜の両容疑者は事件が起きた4月15日深夜に、宝島さん夫妻の殺害現場とみられる品川区東五反田の空き家に入っている。
「これまで逮捕された6人の容疑は全員が死体損壊ですが、東五反田の家で若山、姜両容疑者が殺害に加担していたとなれば6人とも殺害計画を認識していた疑いが強くなり、全員が殺人か強盗殺人罪で起訴される可能性もあります」(社会部記者)
また、佐々木容疑者が調達しようとした6台の飛ばし携帯は、これまで逮捕された容疑者の数と同じで、この6人で犯行を行なうため人数分の携帯入手を図った可能性もある。Y氏は「俺だってカタギでちゃんと生きているし」と語気を強め、事件には加担していないと繰り返しながら、捜査の行方をさかんに気にしていた。
捜査本部は、2月中旬に福岡から上京した佐々木容疑者が、2か月後には関根容疑者の犯罪計画に加担したとみられる経緯に関心を寄せ、Y氏がこの二人をひき合わせた可能性を視野に、3人がどのような関係だったのか慎重に調べを進めている模様だ。動機や犯行に至る経緯の解明のためには、まだまだ捜査で確認することが多く残っている。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected](Twitter)@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班