父親の忠告も男には届かなかった。東京・新宿にあるタワーマンションの敷地内で20代女性が8日に刺殺された事件で、逮捕された男が過去にストーカー行為をしていたことが分かった。男は事件時、「俺はストーカーじゃない」と叫んでいたというが、男の父親は「以前、ストーカーで警察沙汰になっている」と告白。趣味の車を売ってまで2000万円以上を女性に貢いだこともあったという。
警視庁新宿署は殺人未遂の疑いで川崎市の和久井学容疑者(51)を現行犯逮捕。殺人容疑に切り替えて捜査する。現場となったのは西新宿にあるタワマンの敷地だった。8日午前3時ごろ、男は住人の平沢俊乃さん(25)を果物ナイフのようなもので首などを刺した疑いがある。
和久井容疑者は「体を傷だらけにしてやろうと刺した」と供述。目撃者などによると、女性の「誰か助けて」という悲鳴が響き、男の「俺はストーカーじゃない」という声も聞こえたという。
これはストーカー事件なのか、そうでないのか。和久井容疑者は神奈川・川崎市で父親と同居。10年ほど前に離婚を経験しているという。仕事は宅配業をしている。
和久井容疑者の父親は「相手の女性については知らないが、2000万から3000万円ほど金を貸してた女性がいたんですよね。それが返ってこない。2年ほど前に(金を貸した)女の子の店に行って暴れて、一度ストーカーで警察に捕まっている。何の店かは分からないが、場所は新宿。それで接近禁止みたいなことになった。あれから心配してたけど、ここしばらくは何もなかったから、あきらめたと思っていた」と息子の過去を明かした。
警察の調べによると、和久井容疑者は平沢さんが以前経営していたガールズバーの客だったという。トラブルがあり、2022年6月から23年6月までストーカー規制法に基づく禁止命令が出ていた。父親が言及する女性が今回の被害者である可能性が高い。
「息子は『彼女と結婚する』なんて言っていたこともあった。『(女性に)騙されてるんだろ』と注意しても本気にしないで、『優しくて、いい子なんだ』って。でも、趣味の車とバイクを売って金を工面したら冷たくされた。それでストーカーになった」(同)
和久井容疑者のフェイスブックは車とバイクの話題ばかり。最後の投稿は2021年12月で「20年9ヶ月乗ったNSXを手放しました」という愛車との別れを惜しむものだった。また、同年11月には「16年間大事にしてきたNRの嫁ぎ先が決まりました」とバイクを売却したことを報告。「もうバイクを買わず乗りたい時はレンタルバイクに乗ろうと思っています」と趣味との決別をつづっていた。
これらを売ったお金を女性に貢いだが、冷たくされたことで「金を返せ」と執着するようになっていたようだ。その結果が過去の警察沙汰だと父親は振り返る。そして、それでは終わらず最悪の事態になってしまった。「どうしていいか分からない。ワケが分からない」と父親は息子の凶行にぼう然としていた。