黄門様ゆかりの国史跡「侍塚古墳」ピンチ…松食い虫被害広がり緑の葉が赤に、立ち枯れで伐採も

栃木県大田原市湯津上の国指定史跡・侍塚古墳で、重要な景観を作っている墳丘上のアカマツに松食い虫被害が広がり、保護団体などから対策を急ぐ声が上がっている。(石塚格)
同古墳は1692年、水戸藩2代藩主を務めた徳川光圀の指示で、日本で初めてとされる学術目的の発掘調査が行われたことで名高い。古墳のアカマツはその発掘調査の際に墳丘保護のために植えられたといういわれを持つ。現在、約800メートル離れて並ぶ上侍塚古墳(全長114メートル)と下侍塚古墳(同84メートル)にそれぞれ約90本が生えている。
地元住民らでつくる保護団体の侍塚古墳松守会の平野精一会長(84)によると、10年ほど前から松食い虫被害の兆候が出ていたが、最近になって状態の悪化が顕著だという。
特に下侍塚古墳は、墳丘の上に緑のマツが生える姿が優美で、考古学者から「日本で一番美しい古墳」と称賛されたこともあるが、昨年、被害が深刻化し、枯れた1本が伐採される事態に陥った。大田原市によると、これまで台風や落雷の影響で伐採されたケースはあったが、松食い虫被害での伐採は初めてだという。ほかにも4本で被害が大きく、本来は緑の葉が赤くなっている。
上侍塚古墳も被害は顕著で、伐採には至っていないものの下侍塚古墳より多い約10本で被害が確認されている。平野会長は「対策を急がないとアカマツがなくなってしまうと、毎日心配している」と話す。
侍塚古墳を所有するのは国だが、安全上の観点から大田原市が県に相談した上でマツの伐採などを行ってきた。ただ、松食い虫対策としては、薬剤散布などの対症療法にとどまっているのが実情だ。
市文化振興課によると、被害確認調査などで必要な対策は1000万円以上に達すると見込まれており、市単独で実施するのは難しいという。さらに抜本的な対策をとるためには、より多くの費用がかかると見込まれる上、所有者の国などとの調整が必要で、文化財保護法などの規制がハードルとなることが予想されるという。
同課の担当者は「被害が大規模で多額の予算が見込まれる。国や県との話し合いが必要」と話している。

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