警視庁・栃木県警合同捜査本部は19日、殺人容疑で指示役の佐々木光容疑者(28)を再逮捕した。佐々木容疑者が事件に関与した背景には、首謀者とみられる関根誠端容疑者(32)への畏怖があったと捜査本部はみている。「中洲ではあんな人を見たことがなかった…」。調べに対し、佐々木容疑者は関根容疑者への印象をこう語ったという。
佐々木容疑者は福岡県出身。かつては福岡市最大の歓楽街、中洲地区で飲食店の客引きをしていた。事件の数カ月前に上京し、上野でも客引きの仕事を始める。ほどなく古株の客引きに紹介されたのが、関根容疑者だった。
上野で複数の飲食店を経営する宝島龍太郎さん(55)夫妻から店の管理を任され、周辺の人にあいさつされながら肩で風を切って歩く関根容疑者。「すごい人だ」。仕事を請け負っていたわけではない佐々木容疑者の中にも畏怖が芽生えたという。
捜査関係者によると、佐々木容疑者が関根容疑者から直接依頼を受けたのは4月上旬。「遺体の処理をしてほしい」。数百万円の報酬も約束された。関根容疑者は3月下旬に別の知人に「消してほしい人がいる」と夫妻の殺害依頼を疑わせる言葉をかけている。捜査幹部は「役割分担し、容疑者同士の関係性が分からないようにしたのではないか」と推し量る。
佐々木容疑者は打診された数日後、再び連絡を受けたという。別の知人への〝殺害依頼〟が断られたとみられ、遺体の処理だけではなく殺害も依頼された。報酬は上積みされ、約1500万円になった。
佐々木容疑者はこれを引き受ける。「これから上野で仕事をする上では断り切れない」。調べに当時の心情をそう説明したという。
そして佐々木容疑者が頼ったのが、知り合ったばかりの平山綾拳容疑者(25)だった。「リョウケン」と呼んではいたが、飲食店で知り合い、名字さえ知らない関係だった。
4月28日、捜査本部が佐々木容疑者を確保したのは沖縄県の那覇空港だった。現金数百万円とともに持っていたのは、故郷の福岡行きの航空券だったという。(内田優作、前島沙紀)