国産の捕鯨母船として73年ぶりに建造された「関鯨丸(かんげいまる)」が21日、初出漁のため、山口県下関市の下関港を出港した。同港で開かれた式典には所有者の捕鯨会社「共同船舶」(東京)の所英樹社長ら関係者約100人が出席。5色のテープが舞う中、船は岸壁をゆっくりと離れていった。
捕鯨母船は、捕獲された鯨を船内に収容して解体や加工、保管などをする船。老朽化に伴い2023年11月に引退した世界唯一の捕鯨母船「日新丸」の後継船として関鯨丸が建造され、今年3月に完成した。
建造費は約75億円で、全長112・6メートル、総トン数9299トン。航続距離は1万3000キロに達し、南極海にも到達できる。揚鯨(ようげい)設備の斜面の角度を緩め、政府が捕獲対象とする方向で検討している70トン級のナガスクジラを引き上げることも可能となった。冷凍コンテナ40基を設けたことで鯨の部位ごとに適した温度で保管でき、高品質な鯨肉を全国に提供できるという。
一方で、捕獲鯨種の拡大は、反捕鯨国や環境保護団体から批判を浴びる恐れがある。資源保護を前提に、鯨肉の国内消費をいかに拡大していくかなど未知数の面も多い。出港前の式典で、所社長は「鯨の文化を未来永劫(えいごう)、続けるという覚悟で出漁していきます」とあいさつした。
関鯨丸は下関を出港した後、日本の排他的経済水域(EEZ)内の東北、北海道沖で操業する予定。【柳瀬成一郎、橋本勝利】