京都大と住友林業は28日、共同で開発していた木造人工衛星「LignoSat(リグノサット)」が完成したと発表した。大気圏への突入時に完全に燃え尽き、地球環境への負荷軽減などが期待される。打ち上げの背景にあるのは、将来予想される環境問題の存在だ。各国による宇宙開発競争の激化が見込まれる中、「時代の要請」として誕生した木造人工衛星の行方に注目が集まる。
「将来的に木造人工衛星が主流になるべきだと思う」。28日、京都大吉田キャンパスで記者会見した宇宙飛行士で京大大学院の土井隆雄特定教授が力を込めた。
宇宙空間では役目を終えた小型の人工衛星は宇宙ごみ(スペースデブリ)にならないよう、大気圏に再突入させて燃焼させることが国際的なルール。しかし、従来の金属製の衛星では再突入の際に酸化したアルミニウムの粒子が大量に発生してしまう。その結果、地球が太陽から受けるエネルギーバランスが乱れ、気温低下などの異常気象につながる可能性が指摘されている。
土井氏によると、現在の人工衛星の数では地球環境にただちに影響はないという。ただ、今後の宇宙開発競争の激化で打ち上げ数が増加すると、将来的なリスクの高まりは避けられない。
こうした環境問題への懸念とともに、新たな選択肢として木造人工衛星が登場した。今後の見通しについて、土井氏は「将来的には(衛星内部の)電子基板部分も含めて100%木造で作りたい」と強調。宇宙空間での木材利用が認められたことを「大きな一歩」と位置付けた。
また、プロジェクトのメンバーで京大大学院の山敷庸亮(やましきようすけ)教授は「スペースデブリ削減に寄与していることなどを訴え、NASAの機関などを通し、将来的には大型な衛星にも木が使われるよう働きかけたい」と述べた。(木下倫太朗)