国スポ見直し「本当に必要か」費用のしかかる知事会から廃止論も 旧国体曲がり角

各都道府県が持ち回りで開催する「国民スポーツ大会」(旧国民体育大会)について、主催団体の日本スポーツ協会は4日、年度内に開催のあり方を見直すため有識者会議を設置する方針を明らかにした。国スポは昨年11月、全国知事会で「負担が重い」として見直し論が浮上。戦後間もない昭和21年に始まった旧国体は令和に入り、曲がり角を迎えている。
「有識者の方にぜひ現場に足を運んでもらい、誇れる大会にしようとするチャレンジを見てほしい」。今年から国スポに名称変更して初開催を控える佐賀県の担当者は4日、東京都内で開かれた定例会合で国スポ見直しを巡り、こう訴えた。
行政スリム化の一環
議論に火を付けたのは知事会だった。昨年11月、行政スリム化の一環として見直しを決定。会長の村井嘉浩宮城県知事は「都道府県対抗の大運動会が本当に必要なのか」と疑問を呈し、今年4月に個人的意見として「廃止も一つの考え方だ」と言及して波紋を広げた。
費用負担は重く、令和4年に開催した栃木県では施設整備費に約652億円、運営費などに約177億円と総額約829億円を支出。国の補助は約5億5千万円だった。
建設費高騰を背景に懸念は強まる。知事会では国体の負担が重いとする声が多数出た。12年開催予定の島根県・丸山達也知事は3巡目に入る17年以降について、「問題を改善しないまま開催するのは容認しがたい」と反発する。
一方、廃止には慎重論も。神奈川県の黒岩祐治知事は「多くの選手が目標にしている。持続可能な形で継続できるよう検討が必要だ」と発言。大阪府の吉村洋文知事は「都道府県によっては負担が大きい」と述べ、「関西など地区単位で数年に1回、協力しながら開催した方がいい」と主張した。
複数県での開催例も
複数県で共催した例もある。本土復帰する前の沖縄が初参加した昭和27年は福島、宮城、山形の3県、翌年は四国4県で共催。近年でも平成5年は香川、徳島2県だった。
知事会の要望で進めた15年の「国体改革」では20年以降、夏季・秋季大会の一本化や参加者の15%削減など簡素化を宣言。「将来的には広域開催を視野に入れた検討」も掲げたが、抜本改革には至らなかった。
日本スポーツ協会会長の遠藤利明元五輪相は「開催に期待する自治体もある」とし、継続を前提とする考えだ。担当者は「郷土代表としての出場機会はあまり多くない。時代が変わっても幅広い底上げなど変わらない役割はある」と話した。(市岡豊大)

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