能登地震、災害ごみ置き場閉鎖に被災者困惑…「避難中で作業間に合わない」

能登半島地震で被災した石川県内の一部自治体で、災害廃棄物(災害ごみ)を無償で受け入れる仮置き場の閉鎖が決まり、被災者に困惑が広がる。各市町は発生量の推計などから開設期間を設定し、延長もしてきたが、避難中で運搬作業を進められない住民も多い。生活再建への影響が懸念される。(中島和哉、若松花実)
「期限までに間に合わせたくても、到底無理だ」
七尾市中島町地区で被災した実家を片付ける富山県高岡市の団体職員の男性(50)は、全壊した蔵の中で散乱する食器類や家電などを前に嘆いていた。
七尾市に唯一残る仮置き場は、2度にわたって期間延長されたが、7月30日で閉鎖となる。男性が金沢市に避難している母親(75)と一緒に作業ができるのは週1回で、支援ボランティアと日程の調整がつかないこともあり、「休みをつぶしても作業のぺースに限度がある」と訴える。週末に搬入が集中し、仮置き場周辺では車の渋滞も生じる。
七尾市内では49・8万トンの災害ごみの発生が推計されるなか、仮置き場への搬入量は、4月末時点で50分の1程度の1万166トンにとどまる。5月に2か所を閉鎖し、最後の1か所も閉じることについて、市環境課は「利用者は減少傾向にある。いつまでもきりがない」としている。閉鎖後は粗大ごみなどとして、有償での受け入れとなる。
このほか、能登町は今月17日で3か所のうち2か所を閉鎖。住民の要望で開設期間を延ばした穴水町は、6月末の終了を予定する。
これに対し、珠洲市は「公費解体がこれから本格化する」(環境建設課)と当面継続する方針で、輪島市も「2次避難者やようやく仮設住宅に入れた住民も多い」(環境対策課)と、委託業者による回収で受け入れを続けていく。
被災家屋の片付けを支援する「被災地NGO協働センター」(神戸市)の増島智子さん(53)は「ごみの撤去は復興への一歩なのに、仮置き場が減ると、運搬時間や車の燃料費が被災者やボランティアの大きな負担になる」と語る。
県によると、災害ごみは県全体で244万トンの発生が推計され、2026年3月末までの処理完了を目指している。
ただ、今年3月末時点の処理済み量は約1・8%の4万3000トンで、東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「山あいの立地や高齢者が多いこともあり、作業の進行が遅いのではないか」と指摘し、住民に寄り添うため「仮置き場閉鎖後も、無償で受け入れる場所が必要」と提言する。

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