「東京リベンジャーズ」作詞作曲ユーチューハーはなぜ10代恋人を刺したのか

「包丁で彼女を刺してしまいました。出血がひどい」
慌てた様子でこう119番に通報した男は、人気アニメの主題歌を手がけた有名ユーチューバーだった。
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「彼女を殺して自分も死のうと思った。」
事件が起きたのは5月31日の午前9時半ごろ。現場は東京都中野区のマンションだった。駆けつけた警察官に逮捕されたのは音楽系ユーチューバーの「ぷす」こと、矢野麻也容疑者(30)。
「現場は矢野の自宅マンションです。警察が駆けつけると部屋に10代の少女がベッドに仰向けに倒れ、救急隊による措置が行われていた。ベッドの脇には血のついた包丁があり、矢野が彼女を刺したことを認めたため、その場で殺人未遂の容疑で逮捕されました」(全国紙記者)
被害者の少女と矢野は交際しており、この部屋で同居していたという。
「環七沿いの現場は防音機能が完備してあるミュージシャン向けのマンション。間取りは1LDKで家賃は15万円ほど」(地元の不動産業者)
左胸を1回刺された少女に意識はあり、命に別状はないという。矢野は取調べに対し、「彼女との間にトラブルはなかった」と説明。犯行の動機について、こう供述している。
「彼女を殺して自分も死のうと思った。包丁で彼女を1回刺しました」
ギターにハマって高校を中退
矢野が所属していた3人組ユニット「ツユ」のユーチューブ登録者数は130万人を誇る。矢野は「ツユ」で作詞作曲とギターを担当し、2023年1月放送の人気SFアニメ「東京リベンジャーズ」第2期(テレビ東京系)のエンディング主題歌を提供するなど一見すると順風満帆な人生を歩んできたように見える。そんな男が凶行に及んだのはなぜなのか。
矢野は岡山県出身。中学の時には陸上部に所属。
「800mの選手で毎日ストイックにボロボロになるまで走っていたそうです」(芸能関係者)
高校進学後、ほどなくして学校にいかなくなった。
「陸上の後にギターにハマり、練習に明け暮れ、高校も中退してしまった。『当時は1日中弾いていた』と振り返っていた」(同前)
収入が増えると生活が派手になり、女をとっかえひっかえ
高校を中退すると、矢野は大阪に出て、家賃3万円ほどのアパートで貧乏暮らしをしていたという。その後、音楽の専門学校に通いながらニコニコ動画に楽曲の投稿を始めると、徐々に人気が上がっていった。
「19年には『ツユ』を結成。結成当初にリリースした『やっぱり雨は降るんだね』のミュージックビデオはユーチューブで1300万回超の再生数を稼いでいます」(音楽関係者)
22年には大手レコード会社と2年契約を結んだ。
「ツユのユーチューブチャンネルの累計再生数は3億回に届くなど、ぷす君の収入は増え続け、ランボルギーニに乗るなど生活は派手になっていきました。女性ともとっかえひっかえ付き合っていた」(同前)
満足な楽曲が作れないことに悩んでいた
だが、そんな生活にも陰りが見えるようになる。別の音楽関係者が明かす。
「ぷす君はいつも楽曲づくりの“納期”に追われていました。音楽に対する姿勢は真面目なのですが、とにかく情緒不安定。自分の作る音楽が『商業目的に走るあまり低俗になっているのではないか』などと悩んでいたようです」
そして昨年11月12日の「X」への投稿では、所属レコード会社との契約について、こう報告した。
〈こちらの一方的な都合で中途契約解除しました。理由は、自分がクズだからです。働かなくても大金が半永久的に入るようになり、好きな物を好きなだけ買い、好き放題遊び呆けて、穢れた欲望に支配されたからです〉
〈クリエイターを名乗る価値がありません。なので殺させてください〉
不穏な投稿から半年後、矢野はついに凶行に走る。
「満足な楽曲が作れないことに悩んでいたこともあって、同居していた彼女を道連れに“心中”しようとしたのでしょう」(同前)
身勝手な男が失ったものはあまりに大きい。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年6月13日号)

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