内閣支持率の低迷や衆院3補選などで高まっていた岸田文雄首相の退陣論が〝一時停止〟状態だ。7日の東京都議補選でも自民党は大敗したが、「ポスト岸田」の一角である茂木敏充幹事長が「党の結束力を高める」と発言したのだ。
これまで党内では茂木派の議員を含めて公然と岸田首相の退陣を求める声が強まっていた。だが、9日に岸田首相と会談した茂木氏は、報道陣に「状況が厳しければ厳しいほど、組織に遠心力が働いているように見られるということはよくある」と述べ、党内の結束の重要性を強調した。
岸田首相は10日から14日までの日程で米国とドイツを歴訪する。米ワシントンで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席した後、ドイツでショルツ首相との会談も予定しているが、首相の居ぬ間に「岸田降ろし」が強まるムードもない。
流れが変わった要因の一つが、都知事選で野党第一党の立憲民主党などが支援した蓮舫氏が惨敗したことだ。
小林氏「年越してムード変わった後に衆参ダブル選か」
政治評論家の小林吉弥氏は「自民党への逆風は続いているが、立憲民主党の票の取り方をみると野党が大逆転する力もない。総裁選で若手を候補にしても、国民は自民党に厳しい目を向けているのであり、コップの中の争いにしかならない。とりあえず岸田首相で総裁選を乗り切り、年を越してムードが変わった後に支持率の様子をみながら、衆参ダブル選を見据えているのではないか」と語る。
自民党は近く選挙管理委員会を設置し、総裁選日程の検討を本格化させる。内規や慣例に従えば国会議員の投開票日は9月20日か27日が軸となる。
総裁選本番まで2カ月以上あるため、「ポスト岸田」候補はいったん様子見に転じたとの指摘もある。総裁選が近づくにつれ「岸田降ろし」は再び強まることもありそうだ。