東京都文京区の自宅で2016年8月、妻(当時38歳)を絞殺したとして殺人罪に問われた講談社元社員、朴鐘顕(パクチョンヒョン)被告(48)の差し戻し控訴審判決で、東京高裁は18日、懲役11年を言い渡した1審・東京地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。朴被告は「妻は自殺した」と無罪を主張していたが、家令和典裁判長は「被告の供述は相当不自然。自殺の可能性は抽象的だ」と退けた。
裁判員裁判の1審・東京地裁判決は19年3月、朴被告の自宅の寝室には、いずれも首を絞められた時に出る反応である妻の唾液混じりの血痕と失禁の痕が確認されており、朴被告が寝室で妻の首を絞めて殺害したと認定。差し戻し前の2審・東京高裁判決も21年1月、この結論を支持したが、最高裁判決は22年11月、弁護側の自殺説に関する審理が不十分だとして高裁に審理を差し戻した。
高裁は、寝室にあった血痕と失禁の痕から殺害を認定した1審判決について「推認に不合理な点はない」と支持した。
その上で、「暴れる妻を寝室で押さえつけた。妻が包丁を握って起き上がったので別の部屋に移り、しばらくすると妻が自殺していた」とする被告の公判供述を改めて検討。被告の訴える妻の行動について「あまりに唐突で奇異だ」と疑問を呈した。
さらに、被告が自らの通報によって駆けつけた救急隊員に、妻が自殺したと説明しなかったことも不合理だと指摘。「被告の供述は信用性が認められない」と判断し、自殺との主張を退けた。
朴被告は判決言い渡し後、法廷で「裁判長、間違っています。やっていません、僕」と声を上げた。
判決後に記者会見した弁護人は上告する意向を示した。朴被告の母(72)は「理不尽な判決で納得がいかない。最高裁で正しい判断を出してほしい」と話した。【巽賢司】