「例えば、一夫多妻制を導入するとか、遺伝子的に子どもを生みだすとかですよ」
こう話したのは、東京都知事選挙で当選した小池百合子氏に次ぐ165万票を獲得した石丸伸二氏(41)。7月14日に『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)に出演して、少子化対策について語り始めたときのことだった。
「石丸さんは今、いちばん危惧しているのは“人口減少”だと訴えました。この問題の深刻さを多くの人が気づいておらず、地方では経済成長のための原動力が“ガソリン切れの状態”になっており、東京都も、あと15年しかもたない、と」(テレビ局関係者)
“ジョーカー”河合ゆうすけ氏に影響を受けた?
そこに、元参議院議員で女性学研究者の田嶋陽子氏が、具体的な解決策は考えているのかと問いかけた。すると、石丸氏から飛び出したのが冒頭の言葉だった。
これについて、あの“ジョーカー議員”こと、前埼玉県草加市議の河合ゆうすけ氏(43)が指摘する。
「僕の選挙ポスターに影響を受けて、ポロッと出ちゃったんじゃないかと思いましたね(笑)。それまで彼は一回も、一夫多妻制なんて言ってないじゃないですか」
顔面を白塗りにし、アメコミのキャラクターに扮した河合氏も都知事選に出馬していた。女性モデルがほぼ裸など、さまざまなバリエーションがあった河合氏の選挙ポスターだったが、その中には一夫多妻制を訴えたものも。
ポスターには《少子化対策の抜本的解決!》と書かれていた。
「確かにポスターには少子化対策と書きましたが、僕は家族法を改正すべきだと考えていて、そのためのパフォーマンスとして、一夫多妻制を訴えていました。結婚とは、もっと自由であるべきで、同性婚や一夫多妻など、その人に合った結婚制度でいいじゃないか、と。一方で、一夫多妻制が少子化対策に効果があるかは謎です。一夫多妻制で少子化が解決したというデータはないですから。たぶん解決しないと思いますが」(河合氏、以下同)
そんな河合氏は、石丸氏と同じ京都大学を卒業している。彼についてどう見ていたのだろうか。
「Xにも投稿しましたが」
と前置きをしたうえで、改めて語ってくれた。
「当初は、爽やかな青年というイメージで、石丸さんを非難する声は少なかった。ただ、僕はそこに警鐘を鳴らしました。果たして、そんな爽やかな善人がいるのかと」
そこで、石丸氏の経歴についても触れる。
「京大を卒業されて、三菱東京UFJ銀行(当時)に入り、アメリカのニューヨークや南米などでアナリストとして活躍されます。彼は銀行員を辞め、市長になるのですが、そんな華々しい道を歩んできた人が、地元とはいえ、地方の政治に興味があるだろうか、と。僕は疑問を持ちながら見ていました」
本気で“勝てる”と思っていたらアナリストとしては失格
石丸氏は、広島・安芸高田市を“世界で一番住みたいと思えるまちにする”と訴え、市の舵取りを担うことに。
「それでも彼は、非常に頭がいい人だと思っていました。大規模な選挙買収事件があって、現金を受け取ったと認めた前市長が辞任した安芸高田市長選に出馬。抜群のタイミングで市長になると、高齢者の多い議会とケンカを始める。バチバチと火花を散らし、議案が通らない状況になっていましたが、これも全部、計算されていたと感じました」
議案が通らなければ、市長としての仕事が十分にできないはずだが、どういうことか。
「僕も議員の経験があるからわかるのですが、議会の承認をもらわないと、議案も予算も通せないので、議会とはいい関係性を作っておく必要がある。仲が悪いと、全部、不承認にされてしまうので、やりたいことがまったく進まない。それを石丸さんはわかっているはずなのに、議案や予算を通すことではなく、ケンカを続けることを優先するんです」
市長時代の石丸氏は、居眠りする議員に「恥を知れ!」と喝破し、議長を「国語力がない」と切り捨てるなど、旧態依然の議会を正す“正義の市長”として話題となった。
「すると案の定、一期で市長を辞めて、都知事選に出馬した。つまり、名前を売るため、自身の価値を高めるための計算をしていたのではないかと思ったのです」
都知事選後、河井氏は石丸氏とYouTubeの生配信番組で共演したという。
「その際、彼は“本気で当選するつもりだった”と話していました。しかし、まったくの無所属の人が小池さんに勝てるはずがない。組織票もないわけですから。だから、彼も本音では当選するとは思っていなかったはず。仮に、本気で“勝てる”と思っていたら、分析のプロであるアナリストとしては失格ですよ」
ただ、名前を売る行為が悪いとは思わないと河合氏は続ける。
「政治家たるもの、それぐらい狡猾である必要があると思います。しかし、石丸さんを盲目的に応援している人には、そういう狡猾な面も全部見て、応援するか判断することが大切だと訴えたんです。これは、石丸さんを応援することを否定しているわけではありません」
このときまでは石丸氏を、高く評価していたという河合氏。しかし、選挙後にテレビ番組に多数出演するようになってから、一変したという。
「コメンテーターとのかみ合わないやりとりを見て“アレッ?”と感じた人が多かったはず。人気者に突然、逆のスパイラルが生まれて、悪い評判が増加していく。石丸さんが、ここから評価を立て直すのか、それとも落ちていくのか見ものだなと感じていました」
選挙後、さまざまなテレビ番組に出演している石丸氏だが、コメンテーターの質問に質問で返答したり、答えてない質問に対して、
「さっき答えたばっかりです」
との“塩対応”を繰り返した。このときのコメンテーターへの厳しい対応について問われた石丸氏は、
「女、子どもに容赦するっていうのは優しさじゃないと思っている」
「内心、おちょくっていました。あ、ムキになってるって」
などと語り、その言動を非難する声も出ていた。
「やっぱり『そこまで言って委員会NP』での発言が致命的だったと思います。ゲストには、元明石市長の泉房穂さんや、田嶋さんなど、プロフェッショナルな人が出ていて、石丸さんも委縮しているように見えました。そこで一夫多妻制という発言が出るわけですが、誰も一夫多妻制で少子化対策を解決できるとは思わないわけです。
選挙のときも言っていましたが、番組でも“多極分散”を訴えていました。都知事選は、東京の利益を考えなければならないのに、地方に東京の力を分散させていく。都知事として、東京都のあらゆる数字を伸ばしていかなければいけないのに、その立場を目指す人が多極分散とは、もう意味がわからない」(前出・河合氏、以下同)
本当は何もない人なんじゃないか
そこで、石丸氏について再評価をしたという。
「ほかの政策も具体的なことを言っておらず、本当は何もない人なんじゃないかと。東京を動かそうって、そりゃ当然のことでしょう。高齢の地方議員を論理的に倒しているイメージですが、みんな1分間ぐらいの切り抜き動画を見ているぐらいだと思います。それをうまく使って、賢く見せかけているんじゃないかと感じました」
では、河合氏の考える少子化対策とは何か。
「少子化対策への手立ては、もうないと僕は思っています。お金をバラマキしても、抜本的な解決にはならないはず。1947年から1949年の第一次ベビーブームでは、戦後直後で今よりも貧しかった。それでも、4~5人など、たくさん産む家庭が多かった。そう考えると、お金があるから子どもを産むというわけではないはず。マインドの問題だと思うんですよ」
時代は変わり、結婚に対する価値観も変遷してきた。
「かつては20代で結婚しなきゃみたいな世の中が、今は40歳で独身が当たり前じゃないですか。そうなると、治安悪化などの問題を抱える可能性がある移民を受け入れるか、それとも人口を減らしてGDPも悪くなるけど質としてはいい国だからと割り切るか、選択を迫られている時期だと感じています」
つまり、今後の日本の在り方を考えることが重要なのだと説く。最後に、石丸氏を厳しく評価する河合氏だが、ともに東京大学と並ぶ最難関大学である京大出身という点についても聞くと、
「京大卒の2人がヤバイやつみたいになったと思うので、京大には申し訳ないと思ってはいます。けれど、京大は個性的で面白い人が多いというイメージがもともとあると思います。卒業式に仮装して出席するのが恒例となっていますし、私もその流れを汲んで“ジョーカー”になっているので。そういった京大の個性的なイメージを広めたって意味ではよかったんじゃないでしょうか(笑)」
先輩からの厳しい言葉を、後輩の石丸氏はどう受け止めるか――。