日本政府が2024年7月12日に閣議了承した2024年版の『防衛白書』は、韓国のことを「国際社会におけるさまざまな課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国」と書いた。
日韓間で長く引っかかっていた「レーダー照射」問題の手打ちが図られたことで、やっと防衛協力を前面に押し出せるようになったのだ。
懸案はなぜこんなに長期化したのか。表向き、交わらぬ主張を繰り広げてきた日韓両政府だが、実は発生当初から双方の政府当局者の間では「棚上げするしかない」とささやかれてきた。
6年ぶりの手打ちは、両国関係をいたずらに悪化させた安倍晋三、文在寅両政権の外交失策が、また1つ修復されたことを意味する。
平行線たどり続けた日韓の主張
「事件」が起きたのは2018年12月20日のことだった。
防衛省によると、石川県の能登半島沖で午後3時ごろ、海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍艦艇から射撃用の火器管制レーダーを照射されたという。
砲弾やミサイルを発射する前に狙いをつけるレーダーで、これが動いているのを目視で確認し、韓国の艦艇が見えない距離まで遠ざかった後に今度は照射を機器で感知した。
哨戒機は退避行動を取ったうえで、無線で艦艇側に意図を問い合わせたが、応答はなかった。また日本政府関係者は、照射は約5分続いたが、砲身は向けられていなかったことを明らかにした。
翌12月21日、当時の岩屋毅防衛相自らがこれらの事実を発表し、韓国政府に「不測の事態を招きかねない危険な行為」だとして抗議したことを明らかにした。
これに対し、韓国国防省は同21日の夜、「作戦活動の中でレーダーを運用したが、日本の哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない。誤解がないように十分に説明する予定だ」と否定した。
同24日に韓国海軍は記者会見を開き、韓国の艦艇は当時、一帯で北朝鮮漁船の救助活動をしていたことや、自衛隊の哨戒機が艦艇の真上を通過する「特異な行動」をとったため、「光学カメラ」を向けたことを明らかにした。
光学カメラは火器管制レーダーのすぐ横に備えつけられ、作動させるとレーダーのアンテナも同時に動くが、カメラを使うこと自体は危険を与えないと主張。「光学カメラだけを作動させ、レーダー照射はしていない」とした。
韓国側の対応にしびれをきらした防衛省は同28日、哨戒機が撮影した当時の映像を公開する。約13分間の映像は、音声の一部が処理されているものの、当時の緊迫した生々しいやりとりが残っていた。