兵庫県議会は19日、斎藤元彦知事による「パワハラ・おねだり体質疑惑」などの告発文書を調査する百条委員会の第3回会合を開催した。
告発文を作成した元西播磨県民局長は証人として出席予定だったが7日に死去した。代わりに元局長の遺族が、斎藤知事が「ワインを飲んでみたい」などと関係者に贈答品を求めるようなやりとりをしたとされる音声データや、元局長が百条委で読み上げるはずだった陳述書を提出した。
百条委は、広く職員から事情を聴取すべく、アンケートを行うことを決めた。プライバシー保護のため無記名でも回答可能で、「とりまとめは外部に委託する」とした。
とはいえ、疑心暗鬼は広がっているようだ。
野党系会派「ひょうご県民連合」の竹内英明県議は「無記名という方法でも、何かしらのかたちで個人が特定されるのではないか」と、職員が不安がっている実態を紹介した。さらに、「(告発後に懲戒処分を受けた)元局長のような厳しい処分を受けかねない」との懸念があることを明らかにした。
百条委では、職員が証人として出席した場合のプライバシー保護についても確認されたというが、竹内氏は〝リスク〟への懸念を指摘する。
県庁では、次のような「文書」が配布されたという。百条委で証言する職員は、県人事局に守秘義務免除を申請する手続きを行うことが必要なうえ、免除の対象は最小限のものとし、かつ、各部総務課長が承認するというのだ。
これでは、どの職員が何を「証言」するのか、斎藤知事に筒抜けになりかねない。もし知事側に不利な証言をする職員にとっては恐怖だろう。
さらにいえば、事前に証言内容を限定されることで、百条委で処罰対象となる答弁拒否を招く危険があり、百条委が形骸化されかねない。
同会派の上野英一委員も「本来は職員を守る立場の人事局が、逆のことをやっている」と批判した。自民党の富山恵二委員も「これは(本来)外部に対して県庁内部の情報を保護する規定で、百条委員会に適用するのはいかがなものか」とあきれ果てている。
ただ、前述のような文書こそ、斎藤知事の致命傷になりかねない。疑惑を深めるような行為などが露呈するたび、県庁を統括する責任者としての立場はますます苦しくなる。
3年前の知事選で「県民の負託」を受けたことなどを大義として辞職を拒む斎藤知事を今、県民はどのような思いで見つめているのか。外堀どころか、内堀まで埋められつつあり、斎藤氏の決断が焦点になっている。 (政治ジャーナリスト・安積明子)