瀕死の岸田政権を尻目に、9月の総裁選に向けた「ポスト岸田」の動きが活発化している。「次期総裁にふさわしい人」の世論調査では各社とも石破茂・元幹事長が他の候補を圧倒的にリードしている。が、世論通りには進まないのが総裁選。そんななか、岸田首相がアメリカの大統領選で撤退したバイデン大統領に見習って“名誉ある撤退”を選択するのではないかとの見方もある──。【全5回の第5回。第1回から読む】
再選困難と見た米国のバイデン大統領は自ら大統領選から撤退し、ハリス副大統領を後継候補に指名した。
自民党内では、「岸田首相はギリギリまで総裁再選を模索するはずだが、勝ちが見込めないとなれば出馬しても完全な失脚になるだけ。そうなった時はバイデンを見習い、名誉ある撤退で後継者を指名しようとしている」(閣僚経験者)との見方が浮上している。
その際、岸田文雄・首相の意中の後継者候補、いわば“日本のハリス”と見られているのが上川陽子外相である。
政治評論家の有馬晴海氏が語る。
「バイデン大統領は接戦選挙区でトランプ氏に勝てないという調査結果を見せられ、最後の最後で大統領選撤退を決めたと伝えられている。岸田首相もずっと支持率が下がり続け、減税しても支持されない、外交成果をアピールしても世論は反応しない。バイデン氏同様、それまで出馬すると言っていても、総裁選が近づいてから突然、出馬しないと宣言する可能性は十分あります」
そうなれば政権を支えてきた旧岸田派、麻生派、旧茂木派の主流3派体制は崩れる。
茂木敏充・幹事長も岸田首相が再選を断念したら、満を持して総裁選出馬に動くはずだ。
上川内閣は事実上の“第3次岸田内閣”
「麻生太郎・副総裁には加藤勝信・元官房長官を担ぐ選択もありますが、岸田首相と組んで旧岸田派の上川氏を擁立する可能性が高い。麻生氏と岸田氏が派閥をあげて上川氏を担いで初の女性総理をアピールするほうが、総裁選で勝てる可能性が高いからです」(有馬氏)
総裁選に石破茂氏、河野太郎氏、茂木敏充氏、高市早苗氏に加えて上川氏が名乗りを上げると想定すると、決選投票はそのうち、党員票で優勢とされる石破氏と、いまや最大派閥の麻生派と旧岸田派が支援する上川氏の戦いとなる可能性が高い。
岸田首相が後継指名した上川氏が総理・総裁になれば、いわば岸田首相と麻生氏の“傀儡”であり、上川内閣は事実上の“第3次岸田内閣”の性格を持つ。岸田首相にすれば、総裁再選はできなくても今後はキングメーカーとして政治的影響力を残すことができるという計算のようだ。