東京電力は22日午前、福島第一原子力発電所2号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的な取り出しに着手する予定だったが、着手前の準備作業を中断した。取り出し装置のパイプを接続する順番に誤りがあったという。試験的取り出しは、2011年3月の原発事故後初めてで、51年の廃炉完了を掲げる政府・東電の廃炉工程が新たな段階に入る重要な作業にあたる。23日以降に再調整する。
この日は午前7時24分、取り出しに着手する前の準備作業を開始。原子炉格納容器の中と外を隔てる「隔離弁」を開けて、最大22メートルまで伸びる釣りざおのような形の装置を差し込む予定だった。しかし、作業員が装置を押し込むパイプの接続にミスがあったことに気づき、隔離弁の手前で作業を中断した。
東電の小早川智明社長は22日午前、訪問先の新潟県柏崎市で、報道陣に対し、「原因を調査した上で、対策をしっかりと共有していきたい。デブリの試験的取り出しは廃炉の中でも一番重要な局面で、確実性が求められる。ここで焦って大きなトラブルになるよりは、安全に進めていくことが重要だ」と話した。
同原発の廃炉工程は11年12月に始まり、3段階に分かれている。第1期では、炉内を冷やす際に発生した「汚染水」を浄化処理して処理水にする設備の試運転を開始。13年11月からの第2期では、デブリの取り出しに使う装置の開発や処理水の海洋放出を進めた。デブリの取り出し開始によって、廃炉工程は最後の第3期に入る予定だった。
デブリの取り出しは廃炉の最難関とされる。政府と東電は当初、21年に試験的取り出しを始める計画だった。だが、予定していた別の装置では狭い隙間を通すのが難しいことなどが判明。延期を3度繰り返してきた。
11年3月の原発事故では、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が発生し、核燃料が溶け落ちて炉内の金属などと混ざって固まり、デブリとなった。3基で計約880トンあると推計されている。
今回の試験的取り出しは、釣りざお式装置の先端から垂らしたケーブルに取り付けた爪で、最大3グラムのデブリの採取を目指している。デブリは放射線量が極めて高いため、作業は主に遠隔操作となる。