河野氏「異端児」は封印、現実路線で実行力を強調…自民党総裁選に出馬表明

自民党総裁選への出馬を正式表明した河野デジタル相(61)は、豊富な実績と高い知名度を武器に実行力をアピールする戦略を描いている。26日の記者会見では「異端児」とも称された歯に 衣 着せぬ物言いを封印したが、改革姿勢が後退したと受け止められかねないジレンマもあり、現実路線の追求は河野氏にとって「もろ刃の剣」でもある。
「『改革』と言うのは簡単だが、傷だらけになりながらも改革を進める強い意志があるか、実績があるかが問われる」
記者会見でこう述べた河野氏は、閣僚として主導した新型コロナウイルスワクチン接種事業やマイナンバーカードの普及推進などの実績を列挙した。外相や防衛相を歴任した経験を強調したほか、賃金が伸びない状況や国の借金が膨らむ財政状況を「有事」と表現し、「生活の将来不安を取り除く」と対応力に自信を見せた。
河野氏は、報道機関の世論調査による「次の総裁にふさわしい人」では上位の常連だ。ただ、読売新聞社が23~25日に実施した調査では4位(7%)と、トップの石破茂・元幹事長(67)の22%と大差がつき、かつての人気には陰りも見られる。突破力も売りの一つだが、マイナカード推進には「強引だ」との批判もつきまとっており、河野氏はこの日、調査結果について「デジタル化を進めていく上であったり、いろんなことが影響している」と認めた。
持論だった「脱原発」からの修正も現実路線の一環だが、党内には「首相を目指すにあたっては妥当な判断」(ベテラン)との評価がある一方、変節ととられかねない懸念もある。
現実路線は、党内の支持固めにも表れている。河野氏に近い議員の一部からはこれまで「党改革を訴えるなら麻生派をまず出ないと話にならない」(平将明衆院議員)などと、所属する麻生派を離脱するよう再三求められたが、河野氏は応じなかった。麻生派は「河野氏支持」を基本とする方向で、一定の支持基盤を確保したことになる。
ただ、派閥への批判が高まっている状況では、支持の広がりを欠く可能性もある。河野氏は記者会見で「総裁選後の人事に派閥を介入させないことが大事だ」と訴えたが、無派閥で出馬する候補に比べて「古い自民党の象徴とみられかねない」(閣僚経験者)との指摘も出ている。
前回2021年の総裁選で河野氏を支えた石破氏と小泉進次郎・元環境相(43)は今回はライバルとなる。「小石河連合」の票が分散する中、総裁選では河野氏の地力が試されそうだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする