「仏様に祈るしかない」 台風31日に最接近の滋賀、対応に追われる

非常に強い台風10号について彦根地方気象台は28日午後4時時点で滋賀県には31日夜に最接近するとの見通しを発表した。一方、接近前からの暴風やまとまった雨による危険性も訴えている。県は命を守るための備えとして避難行動の確認や食料の備蓄▽最新の気象情報や市町の避難情報の確認▽停電に備えた熱中症対策の準備――の3点を呼び掛けている。【飯塚りりん、礒野健一】
彦根地方気象台によると、30日から9月1日にかけて雷を伴う激しい雨が降り、注意報を発表する見込み。31日午後6時までに予想される24時間雨量は多いところで、南部200ミリ、北部150ミリ。風は30日の午後から強まり、31日には警報を発表する可能性が高いという。
18年には台風21号
県内で過去に被害が大きかった2018年9月の台風21号では、死者が2人、負傷者が74人に上った。建物の被害は全壊などが1棟、半壊などが1196棟となった。農水産業への被害が大きく、被害額は38億2870万円。ビニールハウスの全半壊が目立ち、農作物では果樹の被害が大きかった。
梨・豊水の最盛期を迎える観光農園「びわこもりやまフルーツランド」(守山市幸津川町)では、台風21号で完熟前の梨が大量に落下し、大きな被害を受けた。広報担当の加藤純弥さんは「梨は今が最盛期で一番おいしい時期。警戒心を高めている」として棚やネットの補強などの対策を図る。
10月に修復の寺
本堂が国宝に指定されている善水寺(湖南市岩根)も台風21号で檜皮葺(ひわだぶき)の屋根が飛ぶなどの被害があり、それ以前からの台風被害や老朽化に伴って、昨年はクラウドファンディング(CF)で本堂修復費の一部を募った。今年6月に工事業者が入札により選定され、10月以降に修復に入る予定だった。その直前に襲来しそうな台風10号に、梅中堯弘住職は「境内の建物は他も老朽化し、前のような強い風があれば倒木の危険性もある。屋根が飛ばないように緊急対策をしようにもできることはない。今は仏様に、何とか穏便に台風が通過してくれるのを祈るしかない」と不安を募らせる。
また、全国で米が品薄となっている中、県は農業団体と連携して「早めの稲刈り」を呼び掛けている。草津市下笠町の田んぼでも複数の農家が稲刈り作業に追われていた。有限会社「アグリ草津」は計約46ヘクタールの田んぼで県特産「みずかがみ」や「コシヒカリ」を栽培する。中村幸範代表(63)は「大きな台風なので心配だ。稲が倒れて水分が高くなると、品質が悪くなり、売れなくなってしまう。今年は米が品薄になっている状況でもあるので、できるだけ早く搬入したい」と急いでいた。
三日月大造知事は27日の定例記者会見で、土砂災害が繰り返し発生している米原市の伊吹地区について、「台風10号で(土砂が)流れないとも限らない。土砂流出を知らせる警報システムを最大限に活用して住民の命を守る対応をしていく」と話した。
警察の訓練も中止
イベントの中止決定も相次いでいる。31日と9月1日に彦根市で予定されていた国民スポーツ大会陸上競技のリハーサル大会や31日に琵琶湖で実施予定だった船首に竜をあしらった手こぎボート「ペーロン」の速さを競う「2024びわこペーロン」、30日の大津署による災害警備訓練などが中止となった。
県は「県土木防災情報システム」や「県防災ポータル」などを使った気象情報や市町の避難情報の確認と、懐中電灯や、携帯用ラジオ、モバイルバッテリーなど避難時の携帯品に加え、ハンディファンやスポーツドリンクなど停電した際の熱中症対策のグッズも準備するよう呼び掛けている。

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