候補者乱立の自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)は、小泉進次郎元環境相を推す菅義偉前首相(75)と、河野太郎デジタル相(61)が所属する麻生派(志公会)を率いる麻生太郎副総裁(83)による水面下の“キングメーカーの争い”などとも揶揄されてきたが、麻生氏は総裁選に関わっている場合ではなくなってきた。
9月2日の毎日新聞が、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金作りについて「麻生派(志公会)」でも行われていた可能性がある、などとスクープ報道したからだ。
毎日の報道によると、2022年の政治資金規正法違反事件で罰金などの略式命令を受けた薗浦健太郎元衆院議員(52)=自民党を離党=の元公設秘書が東京地検特捜部の調べに対し、薗浦氏が所属していた派閥「為公会」(現・志公会)からキックバックされた約380万円を収支報告書に記載せず、事務所の裏金口座で管理していた–と具体的に証言していたというのだ。
このパーティーは17年開催のため、すでに政治資金規正法の公訴時効(5年)が成立している。とはいえ、麻生派といえば裏金事件で安倍、二階、岸田の各派が立件される中でも、「適正に処理していた」などと説明し、いまだに派閥の解消もしていない。
元公設秘書の証言は、毎日の記者が東京地検に閲覧申請し、開示された刑事裁判の確定記録。つまり、司法の場で認定された「事実」。麻生派関係議員らの「適正に処理」が大だったのは明々白々だろう。
■「麻生派は合法な形で処理」と明言
裏金事件を受けて開かれた今年5月24日の衆院政治改革に関する特別委員会でも、麻生派の裏金作りに関するやり取りがあった。
日本共産党の塩川鉄也議員(62)は「麻生派、以前の為公会は、山東派の番町政策研究所などと合流をし、志公会となった後の2018年分から、キックバックの収支を派閥側、議員側共に政治資金収支報告書に記載し始めたのではないかと見られるわけであります」と言い、こう問うていた。
「安倍派、二階派、岸田派の裏金が規正法違反で立件されましたが、違法行為を行っていたという点では、麻生派も五十歩百歩なんじゃないでしょうか。このような自らの派閥である麻生派の裏金疑惑について、調査、検証し、国民の前に明らかにすべきではありませんか」
すると、為公会に所属していた自民党政治刷新本部座長の鈴木馨祐議員(47)はこう強く反論したのだ。
「私が所属をしておりました、かつて存在をした為公会でありますけれども、私の知る限り、適法に様々な処理をしていたと承知をしております。政治資金規正法上の通りに処理をしているというふうに承知をしております」
「麻生派と言われる、政治団体としては志公会ということになりますけれども、この団体におきましては、派閥の政経セミナーのパーティー券、政治資金パーティー券についての目標額というものを設定してございました。そして、それを超えた部分について派閥から寄附を受けるという形、これは記載をしてございますので、そういった意味では、今の法制度の中で合法な形で処理をしているものであります」
鈴木氏は裏金作りを承知で虚偽答弁したのか、それとも事実関係を調べないまま、うっかり答えてしまったのか。いずれにしても「党政治刷新本部座長」がこの姿勢では「刷新」など期待できるはずがないだろう。
麻生氏も総裁選のキングメーカーを気取る前に説明するべきことは山ほどある。