【自民党と企業献金 蜜月の半世紀】#6
トヨタ会長の奥田碩が経団連の会長に就任し、2003年、政党に対する政策評価が始まった。その評価をもとに、経団連が会員企業に献金を呼びかけるという仕組みだ。政策評価は、政策ごとのA~Eの5段階。初の評価では、菅直人代表の民主党を、小泉純一郎総裁の自民党が大きく上回った。
政策評価の導入を受けて、菅が経団連の機関誌「経済Trend」04年1月号に「特別寄稿」している。
菅は経団連や知事会などが政策を評価する取り組みを始めたことに、「日本の民主主義の大きな進歩」と称賛。松下幸之助が「継続は力なり」と言ったエピソードを挙げ、自分たちも、「日本の改革に挑戦を続けます」と書いた。最後はこう締めくくった。
「財界の皆様からも、温かくも厳しいご指導、ご鞭撻を賜りますよう、心からお願い申し上げます」
だが、経団連の民主党に対する低評価、自民への高評価は続いた。
政権交代の前年、08年の評価をみると、経団連との政策の合致度は、自民党がA評価7つに対して、民主党はゼロだった。例えば「経済活力・国際競争力の強化と財政健全化の両立にむけた税・財政改革」では、自民党がAに対して民主党がC。「新憲法の制定に向けた環境整備と戦略的な外交・安全保障政策の推進」も自民党がAで民主党がCだ。
政権交代が起きた09年はどうか。経団連は「現時点では十分は評価ができない」と、5段階評価をしなかった。民主党には「リーダーシップ」を、自民党には「健全野党として積極的な役割を」などと当たり障りのないコメントをしただけだった。
翌10年には、経団連は政策評価を廃止し、企業・団体献金への関与をやめた。会長はキヤノンの御手洗冨士夫。記者会見で言った。
「従来の政策評価は硬直的で柔軟性に欠けた。長い間、自民党政権で、与党に評価が傾いてきた。今までのシステムでは実用性がないと気づいた」
結局、自民党に献金するための出来レースだったのではないのか。(敬称略)
▽渡辺周(Tansa 編集長)日本テレビを経て2000年に朝日新聞入社。17年にワセダクロニクル(現Tansa)を創刊、電通と共同通信社の癒着を暴く「買われた記事」で、日本外国特派員協会「報道の自由推進賞」。寄付で運営し非営利独立を貫く。ご支援を!