富士山麓に広がる青木ヶ原樹海での自殺防止対策として、山梨県はドローンによる夜間パトロールを今月から始める。同県は人口10万人あたりの自殺者数が全国ワーストで、樹海での自殺者が押し上げているとされる。熱を感知する赤外線カメラが搭載されたドローンを飛ばして人影を見つけ次第、ドローンのスピーカーを通じて声かけを行い、自殺を思いとどまらせたい考えだ。(甲府支局 大野琳華)
山梨県などによると、昨年の県内での自殺者は215人。人口10万人あたりの自殺者数を示す自殺死亡率は26・8となり、2年連続で全国最悪だった。
このうち県外在住者が51人と全体の2割以上を占めた。特に富士山の北西部に広がる青木ヶ原樹海は自殺に関するイメージが定着しており、県外から来る人が多いという。樹海での自殺防止対策ではこれまで、地元の富士河口湖町と鳴沢村が複数の警備員を配置し、昼間の見回りと声かけを実施してきたが、夜間は行われていなかった。
新たに始める夜の巡回では、ドローンの操縦者らが詰める基地を樹海付近に整備し、上空からの映像を確認。人物を感知した場合は、基地のスタッフがドローンに搭載したスピーカーを通じて声かけを行い、警備員を発見場所に派遣する。必要に応じて県警にも出動を要請する方針だ。
具体的な飛行日や飛行時間などについては、知られると効果がないため、明らかにしない。パトロール活動を所管する県健康増進課の知見圭子課長は「ドローンによるパトロールを含めて様々な方面からアプローチし、自殺防止に取り組んでいきたい」と話している。