保護者から年2300万円超を徴収する教育団体 その実態は

名古屋市内の公立学校の校長らで作る任意団体「名古屋市教育会」が、各校の文化活動や教職員研修への支援を名目に、保護者から会費を集めている。2023年度は総収入約2900万円のうち約4万6000人の保護者から約2347万円を徴収した。しかし、専門家からは「本来は教育委員会が公費で負担すべきもの。学校の便利な財布代わりに保護者から会費を取って事業費に充てるやり方はただちに是正すべきだ」と批判が出ている。
市教育会は市立小中学校長会長が会長を務め、事務局にはOB校長2人を含む3人が勤務。市教育委員会とは別組織だが、市教委の予算執行とは別に、同会独自に教職員や保護者から会費を集めて事業費を計上。公立学校の部活動や教職員研修などを支援している。
毎年新学期が始まる際、各学校で「教育会入会のお願い」と書かれたチラシを担任が配布。チラシには「入会を強制するものではありません」としつつ、入会申込書とともに「1口100円ですが、できれば5口以上ご協力いただきますよう、お願い申し上げます」との言葉が添えられている。
関係者によると、会費徴収は校内で行われており、クラス担任が子どもたちから現金を受け取り、担任名で領収印を押しているという。
「教育会」を名乗る、名古屋市教育会と類似の教育団体は他にもある。1886年発足の公益社団法人「信濃教育会」(長野市)は教員研修を実施したり、教科書を作成したりしているが、担当者は「会員は教員ら教育関係者で保護者から会費は集めていない」と説明。同じく教員から会費を集め、教員研修や副教材作成などを手がける公益財団法人「愛媛県教育会」(松山市)の担当者は「(保護者から会費を集める)名古屋市教育会は特殊なケースではないか」と驚く。
名古屋造形大の大橋基博名誉教授(教育行政)は「保護者からお金を集めるというのは義務教育無償の原則からしておかしく、本来は教育行政の責任において事業支援を行うべきだ。透明性が求められる今の時代には、保護者からお金を集める市教育会自体、必要ないのではないか」と話す。
これに対し、市教育会の小口博則事務局長は「名古屋の先生、子どもたちへの支援に少しでも役立ちたいとの思いで私たちは活動している。これからも理解を求めていきたい」と話す。【川瀬慎一朗】
名古屋市教育会
1881年に創設された名古屋区教育会が前身。かつては全国組織の教育団体「大日本教育会」に属していたが、1946年に脱退して以降、市独自の教育助成団体として活動し、教員や保護者からの会費で運営している。

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