「こんなのノーサイドじゃない」立憲・野田新代表の“刷新感”体制に党内から不満の声

「どうぞ皆さん、今日からノーサイドです。挙党体制で政権を取りましょう」。23日、立憲民主党の新しい代表に選出された野田佳彦氏は、決選投票で枝野幸男氏に勝利した直後、会場に集まる国会議員らにこう語りかけた。しかし翌日、新たな党役員人事が発表された際、少なくない議員がこう漏らした。「こんなのノーサイドじゃない」。野田新体制に何が起こったのか?
「私にない刷新感をどうやってつくっていくかは1つの重要な観点だ」
野田新代表は、代表選直後に行われた記者会見で人事について聞かれ、このように答えた。「刷新感」という言葉は、野田氏が代表選挙中から多用していたキーワード。民主党時代に首相を務めた実績と経験に強みを持つ一方、「古い顔」だと自認する野田氏にとって、人事で刷新感を演出したい狙いがあった。
代表選挙から一夜明けた24日午後、幹事長に小川淳也元政調会長、政調会長に重徳和彦衆院議員、国対委員長に笠浩史衆院議員などを起用する案が提案され、承認された。
また、その新体制では大串博志選挙対策委員長、辻元清美代表代行を続投させ、長妻昭政調会長が代表代行に新たに起用されるなどしている(大串氏は代表代行も兼務)。
野田氏がキーワードとした“刷新感”の点でいえば、中堅議員である小川氏、重徳氏、笠氏を新たな人事の骨格とし、同じく中堅である大串氏が留任したことが挙げられる。特に野田氏が“刷新感”を意識したと思われるのは、小川氏と重徳氏の起用だ。
新たに幹事長に起用された小川淳也氏は、衆議院香川1区選出の当選6回で、53歳。2020年に自身の政治活動を追ったドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」が話題となり、前回の代表選に出馬したのち、政調会長に起用された。党内でも知名度が高く、情熱ある中堅議員として評価されてきた。
また、新たに政調会長に起用された重徳和彦氏は、衆議院愛知12区選出の当選4回で、同じく53歳。党内では、中堅・若手議員のグループ「直諫の会」を率いていて、グループの政策提言が今回の代表選挙で野田氏が訴えた政策にも多く採用された。
野田氏は今回の人事の狙いについて、「刷新感のある中堅を中心に、お願いをした」と記者団に語っている。
しかし、野田新代表の人事をめぐって、党内では早くも不満の声があがっている。代表選に立候補した枝野氏、泉氏、吉田氏を起用しなかったことや、代表選で野田氏を支援した議員が多く登用されているという指摘が相次いでいるからだ。
今回、発表・承認された党役員9名のうち、少なくとも5名が野田氏を支援した議員であり、あるベテラン議員は「完全な論功行賞人事で、挙党一致にはならない」と批判する。
また、別の中堅議員は「枝野氏、泉氏、吉田氏との関係が見えない。自分の陣営だけで固めたような印象は拭えず、挙党態勢にひびが入らないか心配だ」と声をひそめた。
両院議員総会に参加したある中堅議員は、配布された人事案を見てこう感じたという。「こんなのノーサイドじゃない」。
中でも不満を募らせているのは、代表選で枝野氏を支援した、リベラル系の党内最大グループ「サンクチュアリ」だ。サンクチュアリに所属するある中堅議員は、野田氏の色が強い体制をみてこう語る。
「野田氏と枝野氏は決選投票で、国会議員票は9票差だった。国会議員においては支持が拮抗しているのに、この人事は口だけのノーサイドでしかない」。
サンクチュアリには約30人の議員が所属しているにもかかわらず、人事が発表・承認された両院議員総会に来ていた所属議員は少なく、拍手もまばらだった。その雰囲気を察してか、新人事の発表は新役員の挨拶もなくわずか5分ほどで終了し、あまりの短さに会場がどよめいたほどだ。
この人事で、野田氏が掲げる「ノーサイド」という党内融和と、演出しようとした刷新感の両立を図れるのか。野田新代表は早速、難しい舵取りを強いられている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする