大阪府羽曳野市の路上で平成30年2月、韓国籍の崔喬可(さいきょうか)さん=当時(64)=を刺殺したとして殺人罪に問われた山本孝被告(48)の裁判員裁判の判決公判が27日、大阪地裁で開かれ、山田裕文裁判長は懲役16年(求刑懲役20年)を言い渡した。直接証拠がなく、凶器すら見つかっておらず、「犯人性」が最大の争点だった。
事件は30年2月17日夜に発生。崔さんは、被告宅の隣人女性の交際相手。駐車場に車を止め、近くの女性宅に向かう途中の路上で背後から刃物で刺されて死亡した。大阪府警は4年後の令和4年2月に被告を逮捕した。
被告は女性と隣人トラブルがあり、事件発生と同じ時間帯に崔さんから嫌がらせを受けないよう「見張り」目的で玄関前に出たことは認めたものの、犯行については一貫して否認。府警の捜査で凶器は見つからず、被告宅の包丁や衣服からも崔さんの血液といった殺害の痕跡は一切出てこなかった。
こうした状況で、検察側は現場周辺に止まっていた車のドライブレコーダー映像をもとに犯人の動きを推定した。
崔さんが駐車してから現場に向かうまでの約20分間で、長身で細身という被告と体形が似た不審人物が現場周辺に計3回現れ、うち2回は直前に被告宅間近の家に設置されたセンサーライトが点灯。これを踏まえ、「(被告が)自宅前で駐車場を監視し犯行に及んだ」と主張していた。
一方で弁護側は、検察側が現場住宅街を防犯カメラなどを避けて入ることができない「密室のような場所」と位置付け、犯人を住宅街の住民だと絞り込んでいることを疑問視。抜け道の存在を指摘し、「検察側の立証は破綻している」と強調した。被告も最終意見陳述で「私はやっていません」と2度繰り返していた。