「リーリー」と「シンシン」、東日本大震災の年に来日し多くの人を癒す…「光をともす存在だった」

中国に返還される上野動物園(東京都台東区)のジャイアントパンダ、リーリー(オス、19歳)とシンシン(メス、19歳)は28日、最終観覧日を迎え、多くのファンたちが別れを告げた。2頭は29日未明、園を出発し、中国へ旅立つ。
この日の朝、2頭の最後の姿を一目見ようと徹夜組を含め約2000人が長蛇の列を作った。同園は午前9時半の開園を待たずに観覧受け付けを終了。予定より25分前倒しして、同10時5分に観覧が始まると、ファンたちは、タケを食べるしぐさを写真に収めたり、「元気でね」「さようなら」と声をかけたりして、名残を惜しんだ。
2頭は2011年2月、繁殖研究目的の貸与で中国・四川省から来日した。翌12年7月、2頭の間に生まれた最初の赤ちゃんは生後6日に急死したが、17年にシャンシャン(メス)、21年にシャオシャオ(オス)とレイレイ(メス)の双子をもうけた。
最後の観覧者となった千葉県柏市の保育園職員の女性(38)は、長男(3)を出産する前、コロナ禍もあって不安が募ったが、双子パンダの子育てに奔走するシンシンの姿に勇気づけられたという。「最後に会えて運命を感じる。中国に帰っても、多くの人を元気づける存在でいてほしい」と話した。
冨田恭正副園長は報道陣の取材に、「東日本大震災やコロナ禍など日本に暗い雰囲気が漂う中で、光をともしてくれる存在だった」と振り返った。

リーリーとシンシンが2011年2月に来日した当時の園長、小宮輝之さん(76)が読売新聞の取材に応じ、2頭との思い出を語った。
リンリンが08年4月に死んで、上野からパンダがいなくなって3年。来園者から「さみしい」という声を聞いていたから、2頭がやってきた時はうれしかったし、重圧も感じました。
3月11日の東日本大震災では動物園も強い揺れに襲われ、慌てて2頭の様子を見にいきました。シンシンは地震に驚いて走り回っていましたが、まもなく冷静さを取り戻し、眠りにつきました。リーリーもうろうろしていましたが、2時間ほどで落ち着きました。健康への影響を心配しましたが、タケをもりもり食べて、たくましかったですね。
震災による休園を経て迎えた4月1日の公開日。開園前から大行列で、東北の被災地から避難してきた子どもたちもたくさん訪れました。リーリーとシンシンを見終わると、全員が笑顔。いるだけで人を癒やす、大事な存在だと改めて感じました。
13年半にわたり、たくさんの人を元気にしてくれてありがとう。故郷でゆっくり過ごしてください。

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