JICA職員、円借款公表日にコンサル会社へ謝意メール「JICA史上最速案件だ」

フィリピンでの政府開発援助(ODA)事業の入札を巡る情報漏えい問題で、国際協力機構(JICA)職員が、2018年6月に比側への円借款が公表された当日、東京都内の建設コンサルティング会社側にメールで謝意を伝え、「JICA史上最速案件だ」と強調していたことがわかった。職員は、同社の入札参加への「内諾」を前提に、手続きが円滑に進んでいることへの感謝や期待を示したとみられる。
職員は18年5月頃、日本の円借款で行われたマニラ首都圏の都市鉄道「MRT3号線」改修事業のうち施工監理業務について、コンサル会社社員にJICAの見積額や比政府が作成した要員計画などを漏えいした。職員には受注企業を事前に確保し、入札回避などで事業が遅れる事態を回避する狙いがあったとされる。
関係者や読売新聞が入手した資料によると、職員は18年6月20日、コンサル会社社員に「おかげさまで(円借款の)事前通報がなされました」とメールで伝達。「JICA史上最速案件と呼ばれています。ありがとうございます」とも記していた。
外務省はこの直前、事業に関わる円借款について、「日比外相会談で比側に事前通報を行った」と公表し、金利0・1%、償還期間40年といった供与の概要を具体的に明らかにしていた。
同年11月に約381億円の円借款契約が締結され、19年6月に比政府が行った入札では、コンサル会社と別の1社などの共同企業体(JV)が単独応札し、約17億円で落札した。
JICAは今年7月、「調達手続きに関する秘密情報を漏えいした」として、職員を就業規則に基づき停職1か月の懲戒処分にしたと発表。職員の行為は国際協力機構法に抵触する可能性があるが、JICAは円借款の相手国や対象事業などについては説明していない。コンサル会社は取材に「回答は差し控える」としている。

青木一彦官房副長官は15日の定例記者会見で、この問題について「JICA職員が調達関連情報を漏えいしたのは事実だ」とし、「円借款の供与を決定する際に作成するコスト積算情報と施工監理業務の業務内容を漏えいした」と説明した。その上で、JICAは秘密保持義務に関する職員研修の強化などの再発防止策を講じるとし、「政府としても、情報漏えいが発生したことを重く受け止め、JICAの再発防止策をしっかりと監督していく」と述べた。

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