警視庁は今月21日、東京・湯島のガールズバーで、ベトナム国籍の従業員を無許可で接客させていた風営法違反(無許可営業)の疑いで、経営者で28歳のベトナム国籍の女を含む17人を逮捕したことを発表した。
容疑者らは上野、六本木、神田地区なども含めて都内で5店舗のガールズバーを運営し、民族衣装「アオザイ」を着た従業員による接客サービスを提供して、6年間で約4億4000万円を売り上げていたとみられる。接待行為などに関しては過去6回の行政指導も受けていたという。
都内では数年前から湯島や大久保を中心にベトナム人が働くガールズバーが急増している。背景には日本での就職難や技能実習制度の問題が大きく関係している。過酷な労働条件、低賃金、長時間労働などにより、多くのベトナム人が不満を抱えているとされている。
筆者が数年前に訪れた湯島のベトナム人ガールズバーでも、従業員たちは「日本の大学に留学していたが、コロナ禍で予定していたホテルの仕事がなくなり、やむを得ずガールズバーで働いている」などと語っていた。
キャバクラやスナック、パブといった接客業には風俗営業許可が必要だ。また、留学生がこうした業種で働くことは違法であるが、ベトナム人ガールズバーの乱立状況をみても、現実的には不法就労が横行している可能性は否定できない。
さらに最近の円安を受けて、日本に働きに来ても十分な収入を得られず、夜の店で働かざるを得ないベトナム人は増えているとみられる。
ベトナムは国家が経済を管理する社会主義国であるため、経済的平等を重視する文化が根付いているという。仕事を失ったり困窮したりする同胞を見過ごせず、助け合う意識が強いとされる。こうした国民性から、特にコロナ禍が招いた経済的困難に際しては、不法就労のリスクを承知の上でベトナム人同士で雇用やサポートを行うケースも多かったのではないか。
今回の報道があった翌日に湯島を訪れてみると、以前に訪れた店も含めて数軒のベトナム人ガールズバーが通常通り営業していた。湯島には中国、韓国、タイ、フィリピン系など外国人経営の飲み屋も増えており、不法就労や無許可営業の問題は深刻化している。
こうした問題は社会的にも経済的にも大きな影響を及ぼしている。今後は不法就労の取り締まり強化だけでなく、技能実習生や外国人労働者に対する適切な雇用支援策などの整備も求められるだろう。
■カワノアユミ 20代を歌舞伎町と海外の夜遊びに費やした元キャバ嬢ライター。現在は、国内外の夜の街の変遷や日本人の海外移住などを取材。著書に、アジア5カ国の日本人キャバクラで9カ月間潜入就職した『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)。X(旧Twitter):https://x.com/ayumikawano/