選挙の電子投票が8年ぶり実施…全国の自治体は及び腰、サーバートラブルで無効の過去

デジタル化 普及へ一歩
12月の大阪府四條畷市長選で、全国で8年ぶりとなる電子投票が実施される。電子投票は開票時間短縮といったメリットがあるが、システムトラブルへの懸念などから敬遠されてきた。国は運用しやすい環境の整備に動いており、普及への一歩になるか注目される。
市長選は12月15日告示、22日投開票で、新人2人が立候補を表明し、選挙戦になる見通し。同日に実施される市議補選(欠員1)も電子投票で行われる。前回の市長選は、当日有権者数が4万5696人、投票率が44・45%だった。
投票は140台以上のタブレット端末を使い、有権者は候補者の名前を選んで票を投じる。結果は端末ごとに記録媒体に保存し、開票所で集計する。主な狙いは無効票の減少と開票作業に当たる職員の負担軽減。投票用紙の誤交付などのミスも減らせるとされる。
同様に市議補選とセットだった前回選の開票作業は1時間10分で、市選管はこれを大幅に短縮できると見込む。職員は前回選の4分の1の約20人に、人件費も最大25万円減るという。
電子投票は、2002年の岡山県新見市長・市議選で初めて実施された。数時間かかっていた開票作業はわずか25分で終了し、普及への期待が高まった。
ところが、03年7月の岐阜県可児市議選では、集計用のサーバーが過熱し、投票できなくなるトラブルが発生。05年に最高裁で選挙無効が確定した。
トラブル防止のため、総務省は06年12月、システム開発事業者からの申請に基づき、基準に適合するかを検査して事業者に「お墨付き」を出す仕組みを導入した。だが、及び腰になる自治体や事業者が続出。実施されたのは16年の青森県六戸町議補選が最後で、累計では10自治体の25選挙にとどまっていた。
8年ぶりの電子投票に道を開いたのは、国の運用指針の見直しだ。従来の指針では、耐久性や不正防止対策で事実上、専用の電子投票機しか使えなかったが、総務省は20年3月、一般的なタブレット型端末での投票も認めることにした。
端末を製造する京セラ(京都市)が今年7月に検査を申請し、同社のシステムが基準に適合すると判断された。四條畷市は京セラと約3000万円で端末の提供などの契約を結んだ。
端末は1台ごとに独立した運用ができ、トラブルが起きても別の端末に記録媒体を入れ替える対応で済むという。総務省選挙部管理課は「トラブルがなければ、他の自治体も検討するきっかけになる」と期待する。
日本大の林紀行教授(政治学)は「電子投票が始まった20年前と比べ、通信機器の技術は格段に向上し、トラブルのリスクも低減している。国政選での導入についても国会で議論していくべきだ」としている。
◆電子投票=2002年2月施行の地方自治体電子投票特例法で、自治体は条例を制定すれば知事、市区町村長、地方議員の選挙で実施できるようになった。自宅などで行える「インターネット投票」とは異なり、立会人の監視の下、投票所で実施する。海外では、インドの総選挙などで導入されている。

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