地主になりすまして他人の土地を売却したとして、警視庁は16日、住所・職業不詳の倉石三夫容疑者(71)を詐欺と偽造有印公文書行使容疑で逮捕したと発表した。2019年に摘発された「地面師」事件の仲介役で、警視庁が両容疑で逮捕状を取り、行方を追っていた。出国先のフィリピンから千葉・成田空港に帰国した15日に身柄を確保し、逮捕した。
発表によると、三夫容疑者は養子縁組した父親の倉石健一受刑者(74)(服役中)らと共謀して13年12月、横浜市都筑区の宅地約800平方メートルを所有する60歳代男性になりすまし、都内の不動産会社社長らに偽造した男性名義の運転免許証などを示して土地の売買契約を締結。同社から土地代として、現金5000万円と小切手7300万円を詐取した疑い。
三夫容疑者は取引の仲介役で、男性の所有する土地情報をブローカーに伝えて買い手を探し、現金と小切手の受け渡しの場にも同席していたという。
健一受刑者は男性のなりすまし役で、19年6月に別の地面師事件で逮捕され、20年4月に東京地裁で詐欺罪などで懲役8年の実刑判決を受けた。三夫容疑者は健一受刑者が逮捕される4日前にフィリピンに出国していた。警視庁はほかにも、書類の偽造役らが事件に関与したとみている。
今回の事件が起きた13年には東京五輪・パラリンピックの開催が決定し、都心などの地価が上昇傾向に転じていた。