【リマ＝太田晶久、吉永亜希子】石破首相は１５日午後（日本時間１６日午前）、ペルーの首都リマで、中国の習近平国家主席と就任後初めて会談した。両氏は、懸案を管理しつつ共通の利益拡大へ協力する「戦略的互恵関係」の推進を改めて確認し、日本産水産物の輸入再開に向けた９月の日中合意の着実な履行も申し合わせた。
日本の首相が習氏と対面で会うのは、昨年１１月の岸田首相（当時）以来、約１年ぶり。会談は、ペルーでのアジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）首脳会議に合わせ、約３５分間行われた。
首相は会談の冒頭、「戦略的互恵関係の包括的推進と、建設的かつ安定的な関係の構築に向けた大きな方向性を共有する」と呼びかけ、日中関係の改善に意欲を見せた。習氏は「ともに中日関係の正しい軌道に沿った長期に安定した発展を推し進めたい」と述べた。
日中の外交当局は９月、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、国際原子力機関（ＩＡＥＡ）のモニタリング（監視）を拡充した上で、中国による日本産水産物の輸入再開で合意した。首相は会談後、記者団に「習氏自身が（合意に）言及したことは非常に重い」と強調した。ただ、再開の具体的な時期は示されなかった。会談では、日本産牛肉の輸入再開や、精米の輸入拡大に向けた協議も行われたという。
首相はまた、８月の領空侵犯をはじめとする中国軍の活動の活発化に深刻な懸念を伝えた。中国・深市で日本人学校の男子児童が刺殺された事件についても提起し、在留邦人の安全確保を求めた。首相によると、習氏からは「日本人を含む全ての外国人の安全を確保する」と言及があった。
一方、中国国営新華社通信によると、会談で習氏は「互いに脅威ではなく協力関係にある」という共通認識を踏まえ、「建設的で安定した中日関係を築いていきたい」と語り、両国関係改善に向けた意欲を示した。