西村康稔元経済産業大臣(62)が、自民党安倍派(清和政策研究会)が政治資金パーティを巡るキックバックを継続した理由について、同派所属の西田昌司参院議員に対して、「(ある議員から)泣きつかれてやむなくやった」と説明していたことが分かった。
ノンフィクション作家・森功氏の取材に対し、西田氏が明かした。
安倍氏の死後、キックバック継続が決まった
11月29日に始まった臨時国会では、参院政治倫理審査会(政倫審)が開かれる見通し。石破茂首相が関係議員に出席を求め、20人以上の参院議員が出席する意向を示している。西村氏の発言は、政倫審でも焦点となりそうだ。
安倍派の裏金問題を巡っては、2022年4月に派閥会長だった安倍晋三元首相が、政治資金パーティ券のノルマを超える売上をキックバックするのを止めるように指示した。ところが、安倍氏の死後の同年8月5日に、塩谷立氏と下村博文氏の両会長代理、参院幹事長の世耕弘成氏、事務総長だった西村氏、そして事務局長の松本淳一郎氏の5人が集まった会合で、継続が決まったとされる。
松本元事務局長は、政治資金規正法違反の罪に問われた公判の場で、「8月5日に復活の方針が決まった」と語ったが、政倫審に出席した安倍派幹部たちは「8月5日の会合で決定したわけではない」旨を説明しており、主張が食い違っている。いつ、誰が継続を決めたのか、ここが昨年から続く自民党の政治とカネ問題における最大の焦点といえる。
西村氏が意味ありげな様子で手招き
西村氏が「(ある議員から)泣きつかれてやむなくやった」と西田氏に打ち明けたのは、2024年2月1日に開かれた安倍派最後の総会である。森功氏は、12月9日配信の「 文藝春秋 電子版 」及び「文藝春秋」2025年1月号(12月10日発売)に掲載した記事「 重大証言 安倍派を壊した男たち 」で、その様子をこう綴っている。
〈安倍派議員たちは会長代理から座長に就いた塩谷、元会長代理の下村博文、そして五人衆と呼ばれる幹部たちに批判の矛先を向けた。西田は責任追及の急先鋒の一人だ。発言した後、ふと五人衆の方を見ると、意味ありげな様子で西村康稔が西田に手招きをしている。そのまま廊下に出ると、西村が声を潜め、西田の耳元で囁いた。
「あれはある議員に泣きつかれてやむなくやったことなんで、何とかご理解を」〉
みな『知らん』『知らん』
さらに森功氏は、西田氏の証言を詳述する。
〈西田が安倍派最後の総会となった(2024年)2月1日の話をする。
「だから総会で聞いたんです。すると、大紛糾して、みな『知らん』『知らん』言うわけです。で、西村氏が私に『ちょっといいですか』と手招きした。党の会議室から廊下に出ると『いやー、泣きつかれたんや』と言う」〉
西村氏の事務所に事実関係を尋ねると、書面で次のように回答した。
「令和6年2月の総会の際、西田議員に対し、8月5日の会合の内容について話したのは事実です。
具体的には、還付を求める声が上がっていたことを踏まえ、令和4年8月に幹部間で協議が開かれたものの、その協議の際に何らかの決定が行われたわけではなく、私が事務総長を離れたのちに還付が行われたと、経緯を説明しました。
また、私自身が、いずれかの議員から、直接、還付再開を求められたことはありませんでしたが、8月5日の協議の場で、そういった声があるという話を聞かされた旨を話しました」
「誰に泣きつかれたんや」と詰め寄られた後……
西村氏は一体、誰に「泣きつかれた」のか――。
西田氏から「誰に泣きつかれたんや」と詰め寄られた後に、西村氏が語った内容については、12月9日配信の「 文藝春秋 電子版 」及び「文藝春秋」2025年1月号(12月10日発売)に掲載した記事「 重大証言 安倍派を壊した男たち 」で詳報している。
また、記事では、安倍派5人衆の一人である世耕氏や、稲田朋美元防衛相、鈴木英敬衆院議員、塩崎彰久衆院議員ら有力議員にもインタビューしている。
世耕氏は、2022年8月5日の会合で幹部たちが話し合った内容を詳細に明かしたものの、西田氏が語る内容とは食い違う部分もあった。さらに、森喜朗元首相にもインタビューを行い、資金還流が継続された経緯について、話を聞いている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年1月号)