2023年12月3日未明、東京都板橋区在住の高野修さん(当時56歳)が東武練馬駅付近の踏切で線路に飛び込み電車に轢かれ死亡した。1年にわたって捜査を行なっていた警視庁捜査1課は12月8日、殺人と監禁の容疑で東京都小平市に住む塗装会社社長の佐々木学容疑者(39)ら男4人を逮捕した。佐々木容疑者と高野修さんの間にいったい何があったのか。
〈直撃画像〉逮捕前、記者の直撃に答えた佐々木容疑者
「俺その場にそもそもいないし」
12月8日、警視庁は殺人と監禁の容疑で高野さんの雇用主である塗装会社社長の佐々木容疑者ほか、同社社員の島畑明仁(34)、野崎俊太(39)、岩出篤哉(30)ら3人を逮捕した。社会部記者が解説する。
「4人は昨年12月3日未明、同僚の高野さんを暴行した後、車に監禁、その後自殺にみせかけようと東武東上線の練馬駅付近の踏切内に立つように指示して電車に衝突させて殺害した疑いがある。高野さんは日常的に暴行されており、警察は『抵抗できない精神状態におかれていた』と説明している」(社会部記者)
実は「集英社オンライン」は今年5月、佐々木容疑者を約1時間にわたって取材し、事件当日の様子を聞いている。真偽は不明だが、佐々木容疑者らの“主張”は以下のとおりだ。
5月24日、早朝に自宅から出てきた佐々木容疑者に高野修さんが死亡した経緯について取材したい旨を伝えると『(高野さんは)去年の12月2日までウチで働いていたよ。ただ俺その場(事件現場の踏切)にはいなかったからね』と慌てる様子もなく取材に応じた。
佐々木容疑者は左手の親指の付け根付近に英字のタトゥーを入れるなど一見強面ではあるが口調は気さくである。
高野さんは亡くなった前日の12月2日まで佐々木容疑者が営んでいた塗装会社の従業員として働いており、佐々木容疑者とは13年を超える付き合いだったという。
「もともと高野は別の会社で働いていて、たまたま現場で一緒になって意気投合して仲良くなった。最初はいい人だったんすよ。ウチで働いていたのは10年くらいかな。塗装の仕事をやっていた。(事故か事件か)僕らはほんとに知らないんで。俺その場にそもそもいないし」
佐々木容疑者はしきりに事件現場の踏切にはいなかったと繰り返していた。高野さんが亡くなった前日の12月2日については当時こう語っていた。
「その日、高野は普段通り現場に出て、終わったら板橋区の会社の寮に帰ってたんですよ。ちょっと高野は病気なんじゃないかって疑わせるくらい手癖がひどくってね。お金というか何でも人の物を盗んでしまう。まあ、人の財布からお金を盗んだり万引きだったり。ウチの部長の財布から300円を盗んだりしたこともあった。
それはもうお金のためとかではない気がするんですよね。それで言っちゃえば僕社長じゃないですか。『盗みを二度とやるな。次やるんだったら会社を辞めてからやってくれ』と以前にも警告していました。
高野は『僕、社長から見捨てられたら次ないんで。絶対やめます』って言ってたんですけど、12月1日に結局コンビニで万引きをしていたことを知りました。現場で従業員が聞いたんです。だから従業員と一緒に寮まで出向きました。もう彼を解雇するつもりでした」
「今日でお前クビ。寮からも出ていけと告げました」
「これまでいつかは治ると信じて高野の盗み癖を大目に見てきたんです」と、高野さんを“泥棒扱い“する佐々木容疑者は、高野さんの住む寮の部屋にあがると、思わずカっとなり手をあげたという。
「言ったそばから万引きなんかしやがってって、思わず平手で2、3発張ってしまいました。 何を盗んだまでかは知りませんが普段はコンビニでのど飴だとか、弁当だとかみかんとかそういったもんをよく盗んでいた。
ウチの給料は25万円です。そこから借金を8万円差っ引いて渡してましたけど、盗むほど困ってはなかったと思います。一番ひどいのは置き引きでしょっちゅう人の物を持って行ってた。
警察にもやっかいになってますよ。俺も4年前に警察署まで迎えにいったことありますから。そういったことがあり今回もまた万引きをした。だから『今日でお前クビ。寮からも出ていけ』と告げました。
クビを告げた時、高野は憔悴しきってましたね。俺が寮についたのが20時とか21時とかで鍵を受け取り寮から追い出して、他の従業員が駅の近くまで送っていったのが24時前とかだった。自殺なのかなんなのか事情は俺はわからないけど、その後、踏切でいっちゃったらしい」
あくまでも高野さんは自らの意思で線路に飛び込みだと主張し、自身の関与を否定した佐々木容疑者。高野さんが本当に「盗み」をしたかは不明だが、高野さんに対する“あたり”は強かった。
高野さんが何か悩みを抱えていなかったかや、トラブルに巻き込まれた可能性について尋ねると、『ぶっちゃけトラブルはある』と眉をひそめた。
「会社に『高野さんいますか?』って変な男の人が訪ねてきたりもありましたし、おそらくお金がらみだと思いますけど『高野いるか?』って電話がかかってきたこともある。
最後に寮に上がった時も明らかに借金だとわかる債務に関する書類や、『今日伺いましたが不在でした』という書き置きもあった。高野は北海道の函館出身で『相当な不良だった』と本人はうそぶいていた。
競艇場に入り浸っていてお金もなかったから、俺にも100万円近く借金をしていたし、従業員にも1万円程度だけど借りたりしていたくらいだから他にもお金がらみのトラブルはあったと思う」
「降ろしたあとはそのまま帰りましたよ」
高野さんを寮から追い出した後、佐々木容疑者は帰宅。「寮を追い出された高野を従業員2人が2台の車で東武練馬駅近くまで送っていった」と話す。
送迎した野崎容疑者にも当時話をきいた。
「高野さんは僕じゃなくてもう1人の従業員(島畑容疑者)の車に乗っていました。前を走っていた従業員の車が踏切近くで停まったので僕も停まって、そこで助手席のドアが開いて高野さんが降りたんですが、僕は携帯をみていたし、その後、彼がどこに歩いて行ったかもわからない。高野さんと一緒だった従業員によると車中ではずっと無言だったそうです。降ろしたあとはそのまま帰りましたよ」
野崎容疑者は高野さんが電車に飛び込んだことも「先に帰ったし気づかなかった」と関与を否定したが…
「現場付近の防犯カメラで、高野さんが電車に轢かれてから、車が動いていることが確認されている。野崎容疑者は任意の調べで『高野さんが自ら踏切に飛び込んだ』などと説明しているが、野崎容疑者のスマホには『川に飛び込め』『踏切に向かう』といった音声が残されていた。時間をかけて捜査しており、逮捕するにはそれなりの“裏付け”がある」(捜査関係者)
取材中、佐々木容疑者や野崎容疑者は高野さんが亡くなった理由や状況について「わからない」「俺らは関係ない」と言い張っていたが、警察による捜査の手が及んでいることは感じていたようだ。
果たして事件の真相は何なのか。捜査の進展が待たれる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班