臨時国会の焦点である、与野党の「政治改革法案」が9日出そろい、法改正をめぐる〝攻防戦〟が激しさを増している。こうしたなか、認識や方向性の「温度差」が浮き彫りになっているのが「企業団体献金」の位置付けだ。立憲民主党は「企業団体献金の禁止」を定めた再改正案などを参政党、社民党と提出した。ただ、同案では政治団体が対象から除外されており、日本維新の会と国民民主党は「抜け穴がある」として加わらなかった。自民党、公明党の与党は有識者らへの意見聴取を優先して、結論を先送りしたいようだ。そもそも、企業団体献金と政党助成金の二重取りは許されるのか。
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「企業団体献金が廃止の方向となった事実は実際ない」
石破茂首相は5日の衆院予算委員会で、企業団体献金の禁止を求める立憲民主党の野田佳彦代表に対して、こう反論した。
与野党の〝見解〟が食い違うのは、政治改革関連法(1994年)をめぐる経緯への解釈だ。88年のリクルート事件など相次ぐ政治汚職を発端として、当時の非自民の細川護熙連立政権と、戦後初めて下野していた自民党の合意で成立した。
改正政治資金規正法では、大企業が絡んだ一連の汚職事件を問題視し、「政治家個人」への企業団体献金を禁止した。そして「政党」への企業団体献金については、付則で「施行から5年後に見直しを行う」と盛り込んだ。
同時に成立した政党助成法では、国民1人当たり250円の血税が原資の「政党助成金(政党交付金)」の導入が決まった。
99年の規正法改正では、議員の政治資金管理団体への企業団体献金が禁止されたが、政党や政党支部に対する企業団体献金は引き続き可能となった。これを野党側は、政党助成金との「二重取り」と批判する。
こうした経緯について、前出の衆院予算委の討議では、野田氏が「企業団体献金は廃止の方向で改正された」と主張したのに対し、石破首相は「政党助成金を導入する代わりに、企業団体献金は廃止の方向となったという事実はない」と真っ向から否定した。
この対立をどう見るのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「付則でうたわれた『5年で見直す』の位置付けについては、政治家やマスコミ、国民を含め多くが『政党や政党支部への企業団体献金もいずれ廃止する』と認識していたはずだ」と指摘する。
これについては、当事者の「証言」がある。
昨年12月、94年の政治改革関連法で野党・自民党の総裁として細川首相との交渉にあたった河野洋平氏の国会による聞き取りが公表された。河野氏は「自民党は(多額の企業献金を受けていて)いきなり廃止とはいかない。激変緩和のため、5年後に見直しの条件で企業献金を廃止することで合意できた」「企業献金をやめて公費助成にしようということだった。企業献金は廃止しないと絶対おかしい」などと発言していた。