「模倣犯出ないか不安」 中学生2人死傷、容疑者逮捕も住民に残る傷

北九州市小倉南区徳力1のファストフード店で中学生3年生2人が殺傷された事件は、発生から5日で急展開した。逮捕されたのは近くに住む無職の平原政徳容疑者(43)=同区長尾2。逃走を続けていた容疑者の逮捕に市民の多くが安堵(あんど)する一方、子どもたちへの影響を懸念する声も聞かれた。
「とにかく安堵している」。容疑者逮捕の一報を受け、長尾校区まちづくり協議会の吉本保さん(76)はそう語った。14日夜に事件が起きて以降、地元の小学校の児童が登下校する際の見守り活動を強化してきただけに「近くに容疑者がいると知ってショックも受けたが、ホッとした」と話した。
娘が被害生徒と同じ中学校に通う保護者は「毎日ストレスがあり、娘が1人でいるのを怖がっていて、一日を長く感じていた。やっと(容疑者が)捕まり安心した」と胸をなで下ろした。一方で「子どもの不安がすぐに収まるわけではない。模倣犯が出ないかなど不安や恐怖は残る。できる限り寄り添っていきたい」と語った。
容疑者の自宅近くに住む住民には衝撃も広がった。近くの女性(81)は「(容疑者を)普段見かけることはなく、家族がいるかどうかも全然分からなかった。犯人が近くで捕まったと聞いてびっくりした。まさか同じ町内の人だとは思いもしなかった」と驚きを隠せない様子だった。
逮捕を受け、武内和久・北九州市長は報道陣に「未来ある若者の命を奪う卑劣な容疑者に改めて憤りを覚える。不安を感じているお子さんには、大人が必ずそばにいて守ると伝えたい。事件の詳細が明らかになれば(防犯上の)課題を抽出して必要な検討を考えなければならない」と述べた。
市内の児童・生徒の多くは24日から冬休みに入るが、市教委は市立小中高校などに対し、冬休み中の部活動については明るいうちの下校を徹底するよう通知を出した。冬休み明けには全校で心のアンケートを実施し、事件から一定の時間がたった後に心身に不調が出ていないかなどを確認するという。
服部誠太郎知事は「このような犯罪を決して許すことはできない。被害に遭われた方やご家族にできる限りの支援をしていく。二度とこのような事件が引き起こされることのないよう、安全・安心を守る取り組みを進めていく」とのコメントを出した。【山下智恵、日向米華、成松秋穂、反田昌平】

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