「パワハラはあった」「陥れられた」…斎藤元彦知事の疑惑巡りSNS上に断定的な投稿、誤情報・中傷は今も

兵庫県知事選で斎藤元彦知事が再選を果たしてから1か月余りがたった。選挙中、SNS上では様々な情報が飛び交い、誤った情報や誹謗中傷も相次いだ。斎藤氏の支持派と反対派で分断され、余波は今も続いている。
「パワハラはなかった」
斎藤氏が内部告発されたパワハラ疑惑について、選挙中、こう断定する投稿がSNSで拡散した。「斎藤氏は陥れられた」との論調が多かった。今も、SNS上で「あった」「なかった」との論争が続いている。
論争が再燃するきっかけは、今月11日に県の公益通報窓口を所管する財務部の発表だった。前県西播磨県民局長(7月に死亡)の内部告発について「パワハラがあったとの確証までは得られなかった」とする調査結果が明らかになり、「やっぱりなかった」と受け止める投稿が相次いだ。
しかし、財務部は、パワハラについて「なかったと断定したわけではない」と説明している。疑惑については、県議会百条委員会と、弁護士による第三者委員会もそれぞれ調査している。百条委では、斎藤氏もパワハラを否定しつつ、職員の前で机をたたいたり、深夜や休日を問わず、幹部にチャットで指示したりしていたことを認めていた。
結論が出ていない中、支持派と反対派が断定的な投稿を繰り返し、互いに批判する分断が生まれている。
選挙中、特に拡散したのが疑惑を通報した前局長に関する私的情報だった。
前局長の公用パソコンには私的な情報が保存されており、知事選に立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が選挙中、「ばらされたくないから自殺した」「こんな人間の内部告発は信用できない」との主張を展開した。選挙後には、パソコン内のデータだとする画像をSNSで公開した。
しかし、捜査関係者によると、前局長の死亡理由は警察でもわかっていない。
百条委がこの情報を隠ぺいしたとして、県議への中傷も続いている。百条委は私的情報は告発と無関係だとして、当初から調査の対象外にしており、隠ぺいを明確に否定している。
斎藤氏は私的情報の漏えいの可能性があるとして第三者機関で確認するとしている。また、SNS上の誹謗中傷を防止する条例の制定も検討している。

立命館大の谷原つかさ准教授(計量社会学)は拡散の背景について「疑惑の結論が出ない中、SNSに情報を求めた結果、自分が信じたいものだけを集める『確証バイアス』が働いた可能性がある」と分析。「情報に接する際は、事実らしい言説を安易に信じたり、拡散したりせず、結論が出ないことの『曖昧さ』をそのまま受け入れることも必要だろう」としている。

X上の斎藤氏「支持」広がりに「二つの節目」

知事選で斎藤氏の勝因の一つとなったとされるSNS。X(旧ツイッター)の投稿を分析すると、斎藤氏への支持の広がりには<二つの節目>があったことがうかがえる。
東京大の鳥海不二夫教授(計算社会科学)が、7月から投開票日前日の11月16日までの斎藤氏に関する投稿約304万件を「支持」「不支持」に分類し、読売新聞が背景を分析した。
X上では7月以降、斎藤氏への批判的な投稿が大半を占めていた。特に内部告発した前西播磨県民局長の死亡が発覚した同月8日には不支持の投稿が急増した。
一つ目の節目は、支持が不支持を初めて上回った9月中旬だ。県議会による斎藤氏への不信任決議案に関する報道がされていた頃で、県議会の対応への疑問が投稿されるようになった。
支持と不支持が拮抗する中、10月15日に衆院選が公示されると投稿は減少した。
二つ目の節目となったのが、NHK党の立花氏が立候補を表明した10月24日だった。立花氏は前局長の私的情報に関する主張を繰り返し、関連投稿が増え、支持が不支持を大きく引き離すようになった。
選挙戦中盤の11月9日には、不支持が支持を逆転した。これは、特定の宗教団体が斎藤氏を支援しているとの情報が拡散したためとみられる。この情報は宗教団体がすぐに否定。投開票日前日には支持が再び増え、不支持を逆転した。

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