新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国が1兆円超の予算を組んで実施した旅行振興策「県民割」と「全国旅行支援」を巡り、各都道府県への配分額の根拠資料を保存していなかったことが会計検査院の調べでわかった。検査院は予算執行が妥当かどうかが検証できないとして、観光庁に対応の改善を求めた。
同一の都道府県内などの旅行を支援対象とする「県民割」は2021年4月~22年10月、全国版の「全国旅行支援」は同月から23年12月まで実施された。旅行者は、旅費の半額程度を補助されたり、飲食店などで使えるクーポンを付与されたりした。検査院は国会の要請を受け、支出状況などを調べた。
検査院によると、国は、県民割で3016億円、全国旅行支援で6890億円を支出。全体の予算額は1兆1193億円で、感染状況の悪化や団体旅行の需要を過大に見込んだことで1割強が未消化だった。各都道府県への配分にあたっては、コロナ禍前の宿泊者数などをもとに金額を算出したものの、資料を保存していなかった。このほか、13道府県で、宿泊施設側の利用実績水増しなどによる計3億円の不正受給も確認されたという。
観光庁は「旅行振興策を実施する場合には検査院の意見も踏まえ、適正な運用に努めていきたい」とコメントした。