「後世に伝え続ける」 東日本大震災でダム決壊、住民が慰霊式 福島

東日本大震災の地震で農業用貯水ダム「藤沼湖」が決壊し、7人が亡くなり今も1人の行方が分からない福島県須賀川市の長沼地区で9日、住民による慰霊式「記憶をつなぐ集い」が営まれた。参列した遺族ら約80人は約14年前のあの日に思いをはせ、犠牲者の冥福を祈った。
市によると、長沼の震度は6強を観測し、藤沼湖にたまっていた約150万トンの水が、山里の二つの集落(計109戸)をのみ込んだ。「太い木々が、立ったまま襲ってきた。陸の津波だった」と生存者は証言する。
祖母・さつきさん(当時86歳)を失った和智裕子さん(41)は「内陸でもダムや貯水池の近くで暮らす人は、震災を『自分ごと』として考えて避難先などを確認しておいてほしい。3人の子にも普段そう教えている」と話した。
2021年3月11日に地元有志が建立した慰霊碑に刻まれている名前は、6人のみ。行方不明の男児(当時1歳)の家族と、もう1人の犠牲者(同89歳)遺族は、心の整理ができていないという。
集いを主催した柏村国博さん(69)は「どこかで自然災害が起こって犠牲者が出るたび、14年前の記憶が重なる。私たちには、後世に伝え続けていく責務がある」と参列者に呼びかけた
長沼地区では例年、関係者が集まりやすいように「命日」直近の週末に慰霊式を催している。【根本太一】

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