自民党の商品券配布「原資は官房機密費」は33年前からの慣習か…過去の暴露資料に“痕跡”残る

本当に「ポケットマネー」なのか。石破首相が自民党の新人議員15人に1人10万円分の商品券を配った問題は、歴代政権にも波及。自民党の悪しき「伝統文化」と見るのが妥当だ。問題は商品券の原資で、野党の「官房機密費(内閣官房報償費)ではないのか」との指摘通りなら、ドケチ首相の変節も合点がいく。過去に暴かれた機密費の資料にも“痕跡”がしっかりと残っていた。
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問題の商品券に公邸会食の費用を含めれば総額は約180万円。永田町随一のケチで知られる石破がポケットマネーから出すなんて、党内の誰も信じていない。平時なら「天変地異の前触れ」と騒がれただろうが、今や一国のトップ。時の官房長官が首相官邸の自室で管理する機密費の金庫に手が届く立場だ。商品券配布が歴代自民党政権の「慣習」ならなおさらで、いくら石破が自腹と言い張っても日頃のドケチが災いし、機密費流用への疑念は深まるばかりだ。
機密費の財源は国民の税金で支出額は年間10億円超に上るが、公表の義務は一切なし。しかしベールに包まれてきた使い道を、共産党が暴露したことがある。2002年4月、当時の志位委員長が機密費の実態を示す内部文書を入手したとして、中身を公表したのだ。
文書は、宮沢喜一内閣で加藤紘一氏が官房長官を務めていた1991年11月~92年12月に作成された会計記録の一部だ。記された機密費の支出額は1億4386万円。うち「国会対策費」の分類で3574万円の記録があり、92年2月27日の日付で〈商品券〉として312万2575円の記載が残されていた。
派閥裏金よりも古い自民党の悪しき伝統文化
少なくとも33年前から商品券配布の「悪しき作法」は続いてきたのか。旧安倍派の裏金づくりの起源は、森元首相が派閥会長だった二十数年前と言われたが、もっと古い。
当時の宮沢首相の動静を調べると、〈商品券〉の記載日付と前後して会合の日程がズラリだ。2日前の夜には、旧官邸で官房長官の加藤と2人の官房副長官が同席して党4役らと会い、当日昼は旧官邸で報道各社と懇談を兼ねたランチ。夕方は再び加藤と官房副長官を交え、当時の渡辺美智雄外相ら閣僚と会合という具合だ。翌日以降も官邸に地元後援会幹部を招いたり、高級料亭で財界人との会食を重ねていた。
310万円超の金額から商品券をストックしたことも考えられる。宮沢は支出の1カ月以内に、当時は宮沢派所属の麻生太郎衆院議員ら同派の中堅3人を自宅に呼び、親戚である岸田文雄氏の実妹の結婚披露宴に出席。前年に父・晋太郎氏を亡くし、衆院選出馬を決意した安倍晋三氏の表敬を官邸で受けてもいた。いずれも後の総理である。
他にも暴露資料には、高級背広の仕立券や靴券など他の金券をはじめ、自民党議員が外遊した際の餞別や個別の政治資金パーティー券購入……と「機密費」とは名ばかりの使途が次から次だ。
「機密費は自民党議員の懐を潤すために消え、悪しき慣習が脈々と受け継がれてきたのではないか。せめて一定期間の経過後に使途を公表しなければ、私的流用に歯止めはかかりません」(神戸学院大教授・上脇博之氏)
金権腐敗の伝統文化は根深い。

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