徳島県立近代美術館の油彩画「自転車乗り」、天才贋作師の「贋作」と判断…6720万円で購入

徳島県立近代美術館(徳島市)に所蔵されている油彩画「自転車乗り」に贋作の疑いが浮上していた問題で、同館は25日、ドイツの「天才贋作師」と呼ばれるウォルフガング・ベルトラッキ氏による贋作であると発表した。購入の根拠とした鑑定書が誤っていたことや、ドイツ警察の情報提供などから判断したといい、購入先に代金6720万円の返金を求めることを検討する。(荒川紘太)
「自転車乗り」はフランス人画家ジャン・メッツァンジェ(1883~1956年)作として、県が1999年に大阪市の画廊(現在は閉鎖)から購入。昨年6月にベルトラッキ氏による贋作の可能性が高いとする情報が同館へ寄せられ、調査を進めていた。
発表によると、フランスにある画家の著作権管理団体に問い合わせたところ、「鑑定書は誤りである」と7月に返答があった。同氏も読売新聞の取材に対し、「私が描いた作品だ」と認めた。
また、8月以降にドイツ・ベルリン州警察で2010~11年に同氏の捜査を担当した人物とメールで連絡を取った。油彩画の最初の所有者が同氏の共犯者として有罪判決を受けたドイツの画商であることや、鑑定書を作成した研究者も贋作だったと証言したとする情報提供を受けた。
こうした根拠から同館は贋作と総合的に判断。今後、絵の具の分析など科学的な調査を実施して、内容を公表する予定。
記者会見した東條揚子館長は「県民や鑑賞してくださった皆さまにご心配やご迷惑をおかけし、申し訳ない」と謝罪した。同館の竹内利夫課長は「県民への説明という意味で、作品を見ていただく機会を作りたい」とし、油彩画を公開する考えを示した。
高知県と同県立美術館(高知市)は今月14日、所蔵する油彩画「少女と白鳥」について、同氏作とみられる贋作と発表している。

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