韓国の尹錫悦大統領の弾劾審判を巡り、日本政府は4日の宣告内容を注視している。尹氏の罷免・職務復帰のいずれの結果であっても、石破首相は対韓外交で難しいかじ取りを迫られそうだ。
林官房長官は2日の記者会見で、「韓国の国内情勢には様々な動きがあるが、現下の戦略環境で日韓関係の重要性は変わらないとの認識で両国が取り組んでいく必要がある」と語った。対北朝鮮・中国に加え、関税や防衛費増額要求で同盟国に圧力をかけるトランプ米政権への対処でも、連携は不可欠だ。
尹氏が罷免された場合、60日以内に大統領選が行われ、歴史問題で日本に厳しい左派への政権交代が現実味を帯びる。罷免された大統領の成果は批判対象になりやすく、日本側には「尹氏が劇的に改善させた日韓関係にも揺り戻しが起きかねない」(自民党中堅)との懸念が広がる。
2017年の朴槿恵大統領罷免後に就任した左派の文在寅大統領は、慰安婦合意を事実上白紙化した。今回の尹氏弾劾でも、当初の弾劾訴追案に対日外交への批判が盛り込まれたが、最終的に削除された。
一方、棄却・却下のケースでは尹氏は職務に復帰するものの、少数与党の苦境は変わらない。野党の攻勢で政権弱体化が進み、対日外交の推進力は低下する可能性がある。
外務省幹部は「韓国国内でも日韓関係改善の流れは定着しており、今後大きく逆行することはない」とも指摘する。日本政府は韓国世論の動向を含め、事態の行方を見極める考えだ。