課題多い現金給付案、政党間協議に一定の時間・バラマキ批判の恐れ…過去の給付は政権浮揚につながらず

与党 参院選へ危機感

自民、公明両党が国民一律の現金給付を政府に要求する方向で調整に入ったのは、夏の参院選への危機感を強めているためだ。今後、政府・与党で給付額などを巡る協議を本格化させる見通しだが、課題は多い。(岡田遼介、阿部雄太)
「トランプ関税で、全国各地で不安が広がっている。林官房長官から『党としても考え方を早めにまとめてほしい』との要請があった」
自民党の小野寺政調会長は9日、視察先の群馬県太田市で記者団に対し、官房長官から視察中に電話があり、米国の関税措置の発動を受けた経済対策を党で取りまとめるよう指示があったことを明らかにした。小野寺氏は「経済不安が国内景気に及ぼす影響を分析する必要がある」と述べ、党内議論を急ぐ考えを示した。
経済対策の柱として想定するのが、国民への現金給付だ。石破内閣の支持率は低迷しており、「有効な手を打てずに参院選を迎えれば、さらに厳しい戦いになる」(自民中堅)との見方が、現金給付論を後押ししている。
公明の岡本政調会長は9日の記者会見で、現金給付について「もちろん選択肢だ。個人消費を支えることは重要だ」と語った。自民幹部も「物価高に対応しなければならない」と訴え、3万~5万円程度を一律で支給する案を主張している。公明内には、「1人10万円ぐらいじゃないとインパクトがない」(ベテラン)との声もある。
参院選前に大型の現金給付の実施を決定するには、今国会で補正予算案を成立させることが必要となる。衆院では与党が過半数を割り込んでいるため、成立には一部野党の賛成が欠かせず、政党間の協議に一定の時間がかかる可能性がある。
通常国会の会期末は6月22日で、参院選を控え、会期の大幅延長は難しい。自民幹部は「補正予算案の審議を行うなら、かなり急がなければならない」と指摘する。
石破首相ら政権幹部は、世論の動向にも神経をとがらせている。一律の大型給付は「選挙目当てのバラマキだ」との批判を浴びる恐れがあるためだ。
政府は過去にも、景気浮揚策として現金や商品券の給付を打ち出してきた。バブル崩壊後の1999年には、15歳以下の子どもらに1人2万円分の「地域振興券」を発行し、リーマン・ショックで景気が低迷した2009年には、1人あたり1万2000円の定額給付金を支給した。
将来不安などから貯蓄に回る傾向にあり、政権浮揚にもつながらなかった。効果を疑問視する意見は根強く、政府内からは「給付の理由を説明するのは、なかなか難しい」との声も漏れている。

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